
工数とは?人日・人月の計算方法と、見積もり・契約で相手と合意する方法
工数(こうすう)とは、ある作業を終えるのに必要な量を「人数×時間」で表したものである。単位には人時(にんじ)、人日(にんにち)、人月(にんげつ)を使う。3人で2日かかる作業は6人日で、これは1人なら6日かかる量を意味する。かかる時間そのものではなく作業の量を表す点が、期間や納期との違いである。
この記事のポイント(TL;DR)
- 工数は人数×時間で計算します。よく使う換算は、1人日=8時間、1人月=20人日=160時間です。ただし、この換算は法律や規格の決まりではなく、現場の慣習としての前提です。
- 1人月=160時間は、年平均で見れば現実に近い数字です。一方で月ごとの差は大きく、2027年の土日祝を除いた日数で計算すると、1か月は144〜184時間の幅があります。
- 工数は量で、期間は別物です。同じ10人日でも、2人が専任なら5営業日、2人が50%の兼務なら10営業日です。顧客の確認待ちが3日あれば、工数は同じまま期間だけ延びます。
- 受託案件では、工数を正しく出すだけでは足りません。どの前提で出した数字かを、見積もりと契約の段階で相手と合意しておく必要があります。本記事では前提の書き方の文例を載せています。
- 工数が増えそうなときは、超えてからではなく、超えると分かった時点で伝えます。「何が変わったか」「工数と納期への影響」「選べる案」の3点を、文例つきで示します。
工数とは|意味・読み方・英語
工数とは、作業を終えるのに必要な量を、人数と時間を掛けて表した数字です。読み方は「こうすう」です。「この作業は5人日の工数がかかる」のように、仕事の大きさを人数に関係なく比べるために使います。
ここで大事なのは、工数が時間ではなく量だということです。「6人日」と聞いても、何日で終わるかは分かりません。1人なら6日、2人なら3日、3人なら2日です。何人で取り組むかを決めて初めて、期間が決まります。
百科事典の説明でも、工数は作業量を表す概念で、時間×人で表すものだとされています。同じ項目は、用語の意味は決め事であり、企業や組織によって異なる場合があるとも書いています(Wikipedia「工数」、2026年11月4日確認)。この「決め事」という点は、後半の見積もりと契約の話につながります。自社の「1人月」と相手の「1人月」が同じ時間とは限らないからです。
英語では、man-hour(人時)がよく使われます(Wikipedia "Man-hour"、2026年11月4日確認)。同じ項目は human-hour という呼び方も挙げています。作業量という意味全般を指すときは effort という語も使われ、人日は man-day や person-day、人月は man-month や person-month と表します。
「工数」の使い方と言い換え
社内では「工数」で通じても、顧客や他部署には伝わりにくいことがあります。相手が分かる言葉に置き換えた例を並べます。
| よくある言い方 | 言おうとしていること | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 工数がかかります | 作業の量が多い | 作業に時間がかかります |
| 工数を確保します | 担当者の時間を空ける | 担当者の時間を確保します |
| 工数が足りません | 人手か時間が足りない | 今の体制では手が回りません |
| 工数を削減します | 作業の量を減らす | 作業時間を減らします |
| 工数をいただきます | 相手に手間をかける | お手間をおかけします |
「工数をいただく」は社内の連絡でよく見ますが、顧客には「お手間をおかけします」のほうが自然です。また、建設や製造の現場では、1人が1日にこなす作業量を「人工(にんく)」と呼ぶこともあります。
工数の単位|人時・人日・人月の違いと換算
工数の単位は人時、人日、人月の3つで、作業の大きさに合わせて使い分けます。短い作業は人時、数日から数週間の作業は人日、数か月にわたる案件全体は人月で表すのが一般的です。
| 単位 | 読み方 | 意味 | 換算の例 | 使う場面 |
|---|---|---|---|---|
| 人時 | にんじ | 1人が1時間でこなす量 | 8人時=1人日 | 打ち合わせ、修正、小さな作業 |
| 人日 | にんにち | 1人が1日でこなす量 | 20人日=1人月 | 作業の見積もり、WBSの1行 |
| 人月 | にんげつ | 1人が1か月でこなす量 | 1人月=160人時 | 案件全体の規模、開発の契約 |
換算の早見表は次のとおりです。1人日=8時間、1人月=20人日で計算しています。
| 時間(人時) | 人日 | 人月 |
|---|---|---|
| 4 | 0.5 | 0.025 |
| 8 | 1 | 0.05 |
| 40 | 5 | 0.25 |
| 80 | 10 | 0.5 |
| 160 | 20 | 1 |
| 480 | 60 | 3 |
「1人日=8時間」「1人月=20日」は誰が決めたのか
1人日=8時間は、法定労働時間と同じ数字を使った慣習です。 労働基準法第32条は、休憩時間を除いて1週間に40時間、1日に8時間を超えて労働させてはならないと定めています(労働基準法(e-Gov法令検索)、2026年11月4日確認)。ただし、これは働かせてよい時間の原則を定めた条文で、工数の単位を定めたものではありません。所定労働時間が7時間半の会社なら、1人日を7.5時間で計算することもあります。
1人月=20日にも、法律の定めはありません。 どのくらい現実に近いのかを、内閣府が公表している国民の祝日をもとに計算しました。土日と祝日・休日を除いた日数は、2026年が244日(月平均20.3日)、2027年が245日(月平均20.4日)です。年平均で見れば、20日はかなり妥当な前提です。
問題は月ごとの差です。2027年の各月に8時間を掛けると、次のようになります。
2月と5月は18日しかないので144時間です。「1人月」の作業を2月の1か月で終えようとすると、計算上16時間足りません。 2人日分です。逆に、12月は23日あるように見えますが、年末年始を休む会社では実際にはもっと少なくなります。
準委任のうち稼働時間で報酬が決まる契約では、この差がそのまま請求額や作業量の話になります。「1人月」という言葉だけで合意せず、何時間を指すのかを決めておきます。書き方は後の章で示します。
工数の計算方法|基本の式と例題
工数の基本の式は「工数=人数×時間」です。日数で数えるときは「時間」が「期間」になります。3つの数字のうち2つが決まれば、残りの1つが出ます。
工数 = 人数 × 期間
人数 = 工数 ÷ 期間
期間 = 工数 ÷ 人数
例題で確かめます。
例題1: 工数を出す。 3人で2日かかる作業の工数は、3人×2日=6人日です。
例題2: 単位を変える。 合計40時間の作業は、40÷8=5人日です。人月にすると、5÷20=0.25人月です。
例題3: 必要な人数を出す。 30人日の作業を10営業日で終えるには、30÷10=3人必要です。
例題4: 期間を出す。 10人日の作業を2人で進めると、10÷2=5営業日です。
例題5: 途中で人数が変わった場合。 最初の20営業日は2人、残りの5営業日は4人で作業したなら、2×20+4×5=60人日です。20日で割ると3人月になります。
例題6: 金額を出す。 工数に単価を掛けます。1人日の単価を仮に5万円とすると、10人日で50万円です。単価は仮定の数字なので、自社の数字に差し替えてください。
例題どおりにいかない3つの理由
式はここまでで全部です。ただ、実際の案件ではこの計算のとおりに終わらないことが多く、理由はたいてい次の3つのどれかです。
1つ目は兼務です。例題4の2人が他の案件も担当していて、この案件に使える時間が半分だとします。1日に進む量は2人×50%=1人日なので、10人日なら10営業日かかります。人数だけで割ると、期間を半分に見積もることになります。
2つ目は1日の中の作業時間です。8時間のうち、社内の会議や連絡に2時間使うなら、手を動かせるのは6時間です。10人日(80時間)の作業を1人で進めると、80÷6で約13.3日、切り上げて14営業日です。見積もりの1人日を「実際に手を動かす時間」で考えるのか、「勤務時間」で考えるのかを、社内で揃えておきます。
3つ目は待ちです。顧客の確認や素材の支給を待つあいだ、工数は増えませんが、カレンダーの日付は進みます。
ここまでの話を1枚にすると、次の図になります。
人を増やせば期間が縮むとは限らない
「期間=工数÷人数」は、作業をきれいに分けられるときにだけ成り立ちます。ソフトウェア開発の古典『人月の神話』に由来するブルックスの法則は、遅れているプロジェクトへの要員追加はかえって遅れを招くと説きます。新しく入った人が慣れるまでに時間がかかること、人が増えると調整の手間が増えること、分けられない作業があることが理由です(Wikipedia「ブルックスの法則」、2026年11月4日確認)。
ソフトウェア開発の話ですが、デザインや記事制作でも、1人の判断が全体を決める作業は分けにくいものです。見積もりで「人を足せば間に合う」と書く前に、その作業が本当に分けられるかを確かめてください。
工数と混同しやすい言葉|期間・納期・稼働・費用
工数は作業の量で、期間や納期はカレンダー上の日付、稼働は使える時間、費用はお金です。この4つを混ぜて話すと、打ち合わせで食い違いが起きます。
| 言葉 | 表すもの | 単位の例 | 例 |
|---|---|---|---|
| 工数 | 作業の量 | 人日、人月 | デザインは6人日 |
| 期間(工期) | 始めてから終わるまでの長さ | 営業日、週 | 着手から6週間 |
| 納期 | 納める日 | 日付 | 3月31日 |
| 稼働 | 人が案件に使える時間の割合 | %、時間 | 週20時間、稼働50% |
| 費用 | かかるお金 | 円 | 工数×単価 |
典型的な食い違いは、顧客が「いつ終わりますか」と聞いているのに「10人日です」と答えてしまう場面です。顧客が知りたいのは日付なので、体制と確認待ちを含めた日付で答え、工数は根拠として添えます。逆に、社内で「来週まで空いています」と聞いても、それは稼働の話で、作業が来週で終わるかどうかは工数を見ないと判断できません。
業種で変わる工数の数え方
工数の考え方は共通でも、よく使う単位と、数字の使い道は業種で違います。相手の業界の数え方を知っておくと、打ち合わせでの食い違いが減ります。
| 仕事 | よく使う単位 | 工数の主な使い道 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| システム開発 | 人月 | 規模の把握、見積もり、体制の計画 | 「1人月」が何時間かを契約で決める |
| Web制作・デザイン | 人日 | 見積もりの根拠、利益の確認 | 修正の回数と確認待ちで大きく動く |
| コンサルティング・士業 | 人時、人日 | 稼働の報告、担当の割り当て | 調べものや資料作りの時間を記録し忘れる |
| 製造 | 人時、分 | 原価の計算、工程の設計 | 作業者数だけでなく設備の時間も見る |
| 建設 | 人工 | 人の手配、原価の計算 | 天候などで期間が動く |
製造の現場では、さらに細かい言葉も使われます。図面の指示から計算した工数を理論工数、そこに工程上必要な時間や休憩などを加えたものを標準工数と呼ぶことがあり、工数に「チャージ」という時間あたりの係数を掛けて労務費を出します(Wikipedia「工数」)。名前や定義は企業によって違うので、取引先の資料に出てきたら、何を含む数字なのかを確かめてください。
業種が違っても変わらないのは、工数の数字だけを渡しても意味が伝わらないことです。誰が、どの条件で、何を含めて出した数字なのかを添えて初めて、相手が判断に使える情報になります。
受託案件で工数を見積もる手順
見積もりの工数は、作業を分けて1行ずつ数字を入れ、抜けやすい作業を足し、最後に余裕を別枠で持つ順に作ります。一気に全体の数字を出そうとすると、根拠を説明できません。
- 成果物から作業に分ける。 「Webサイト制作」のままでは数字が出ません。担当者が見積もれる大きさまで分けます。分け方の詳細はWBSの作り方と記入例にまとめています。
- 1行ずつ工数を入れる。 実際に手を動かす人に出してもらいます。作業者によって速さが違うので、誰が担当するかも決めます。
- 抜けやすい作業を足す。 打ち合わせ、議事録、進捗報告、顧客の確認後の修正、動作確認、公開の作業です。
- 顧客側の作業は別に書く。 素材の支給や確認は、自社の工数には入れず、「いつまでに返してもらうか」として前提に書きます。
- 余裕を別枠で持つ。 各行に黙って上乗せせず、合計の下に別の行で置きます。
- 工数を期間と金額に直し、前提を書く。 体制と確認待ちから期間を、単価から金額を出します。
工数の出し方は3種類ある
1行ずつの数字の出し方には、主に3つの方法があります。
| 方法 | やり方 | 向いている場面 | 弱いところ |
|---|---|---|---|
| 積み上げ | 細かい作業ごとに数字を出して合計する | 範囲が決まっている案件 | 時間がかかる。抜けた作業はゼロになる |
| 類推 | 似た過去の案件の実績を元にする | 初期の概算、繰り返しの多い仕事 | 似ていない部分を見落とす |
| 三点見積もり | 楽観・普通・悲観の3つの数字から出す | やったことのない作業 | 3つの数字の根拠が弱いと意味がない |
三点見積もりは次の式で計算します(文教大学の講義資料「日程計画(4)」、2026年11月4日確認)。
期待値 =(楽観値 + 4×最可能値 + 悲観値)÷ 6
楽観4人日、普通6人日、悲観14人日なら、(4+24+14)÷6=7人日です。普通の値である6人日より大きくなります。うまくいかなかったときの振れ幅が、数字に反映されるからです。同じ資料は、この方法を過去のデータがないときに採用するものと説明しています。
記入例:Web制作の見積もり(架空の例)
ここからは説明のための架空の例です。工数も単価も仮定の数字で、相場を示すものではありません。下層ページつきのWebサイトを、2人で作る想定です。
| 作業 | 工数(人日) | 数字の根拠・前提 |
|---|---|---|
| 構成案の作成 | 2 | 原稿は顧客が用意する |
| デザイン | 6 | トップと下層の型を作る |
| コーディング | 8 | デザインの確定後に着手する |
| 動作確認 | 2 | 指定のブラウザとスマートフォンで確認する |
| 修正対応 | 3 | デザインと実装の確認で各2回まで |
| 定例・議事録・進捗報告 | 3 | 6回×(打ち合わせ1時間×2人+準備と議事録2時間) |
| 小計 | 24 | |
| 余裕 | 2 | 想定外の作業のために別枠で持つ |
| 合計 | 26 | 単価を仮に5万円とすると130万円 |
抜けやすいのは「定例・議事録・進捗報告」の行です。1回あたりは4人時でも、6回で24人時、つまり3人日になります。この行がないと、案件の管理にかかる時間はすべて自社の持ち出しです。
期間は、次のように出します。2人とも稼働70%なら1日に進む量は1.4人日で、26÷1.4は約18.6なので19営業日です。そこに、顧客の確認3回×各3営業日の待ちを足すと、28営業日になります。週5日で約6週間です。定例の6回は、この6週間から来ています。
余裕をどのくらい持つかに、公的な基準はありません。 「一律で何割」と決めるより、自社の過去の案件で見積もりと実績がどのくらい離れていたかを見て決めるほうが、根拠を説明できます。そのためにも、次章以降で扱う実績の記録が役に立ちます。
見積もりを出す前の確認項目
顧客に渡す前に、次の項目を確かめます。1つでも答えられないなら、その数字はまだ説明できない状態です。
- 1人日と1人月が何時間かを決めている
- 各行の数字を、実際に担当する人が確かめている
- 打ち合わせ、議事録、報告、修正の時間が入っている
- 顧客の作業は工数に混ぜず、返してほしい日を書いている
- 余裕は社内の表で別の行にあり、各行に隠して上乗せしていない
- 兼務の割合と確認待ちを入れて、期間を出している
- 「含まれないもの」と「前提が変わったときの扱い」を書いている
見積もりと契約で工数をどう合意するか|請負と準委任の違い
工数の役割は契約の型で変わります。請負では金額の根拠、準委任では報酬や作業量そのものに直結します。民法は、請負を「ある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する」契約と定めています(第632条)。準委任は、法律行為でない事務の委託に委任の規定を準用するものです(第656条)。また、委任事務の履行で得られる成果に対して報酬を払う約束もできます(第648条の2)(民法(e-Gov法令検索)、2026年11月4日確認)。
| 項目 | 請負 | 準委任(稼働に払う形) | 準委任(成果に払う形) |
|---|---|---|---|
| 報酬の対象 | 仕事の完成 | 事務の処理 | 事務で得られる成果 |
| 工数の役割 | 金額を出す根拠 | 作業量と報酬の基準 | 金額を出す根拠 |
| 工数が見積もりを超えたとき | 契約に定めがなければ、増額には相手との交渉が要る | 上限や精算の定めに従う | 契約の定めに従う。範囲の変更は交渉する |
| 必ず合意すること | 完成の条件、範囲、前提が崩れたときの扱い | 1か月の時間、上限、超えるときの承認、報告の方法 | 成果の条件、範囲、前提が崩れたときの扱い |
ここでの説明は一般的な整理で、個別の案件についての法的な助言ではありません。実際の負担は、契約書の条項と個別の事情で決まります。迷う場合は法務担当者や弁護士に確認してください。
見積書に工数を書くかどうか
見積書に工数を出すかどうかに、決まった正解はありません。稼働に対して払う準委任なら、工数は報酬そのものなので、書かないわけにはいきません。迷うのは請負の場合です。
| 工数を見せる | 工数を見せない | |
|---|---|---|
| 良いところ | 金額の根拠を説明でき、減らす相談をしやすい | 成果と金額で話せる。単価の比較をされにくい |
| 困るところ | 「この作業は3人日も要らないのでは」という1行ごとの値引き交渉になりやすい | 金額の根拠を聞かれたときに答えが要る |
| 向いている場面 | 開発や運用など、作業量で説明するのが一般的な仕事 | デザインやコンサルティングなど、成果で価値を語りやすい仕事 |
どちらを選んでも、社内の余裕の内訳や原価は顧客用の資料に入れないようにします。社内用の表をそのまま渡すと、担当者ごとの数字や余裕まで見えてしまいます。工数を見せない場合でも、作業の範囲と次の前提は書いておきます。
見積もりに書いておく前提(文例)
工数の数字より大事なのは、数字が成り立つ前提です。前提が書いてあれば、後から条件が変わったときに、それを「変更」として話せます。そのまま書き換えて使える文例です。
本見積もりの前提
- 1人日は8時間、1人月は20人日(160時間)として計算しています。
- 原稿と写真は、貴社にご用意いただきます。
- デザインと実装の修正は、それぞれ2回までを含みます。
- 貴社のご確認は、1回につき3営業日以内を想定しています。
- 上記の前提が変わる場合は、工数と納期を見積もり直し、ご相談のうえで着手します。
稼働に対して払う準委任なら、次のように時間の扱いも書きます。
稼働の扱い
- 1か月の稼働時間は80時間を上限とします。祝日の多い月でも、この時間を基準とします。
- 上限を超えそうな場合は、超える前にご連絡し、ご承認をいただいてから作業します。
- 毎月5営業日までに、前月の作業内容と時間をご報告します。
なお、取適法(旧下請法)の対象となる委託取引では、受託する側が協議を求めたのに、委託する側が協議に応じず一方的に代金を決めることが問題になります。条文は「費用の変動その他の事情が生じた場合」で、「協議を求めたにもかかわらず」という条件つきです(取適法 第5条第2項第4号(e-Gov法令検索)、2026年11月4日確認)。工数が増えれば必ず増額できるという意味ではなく、対象かどうかは取引の内容や資本金・従業員数で決まります。ただ、前提を書いておけば、「事情が変わった」と説明する材料になります。
「もう少し安くならないか」と言われたら
工数を根拠に見積もりを出すと、値下げの相談を受けることがあります。このとき、工数の数字だけを減らして範囲を変えない返し方は避けます。作業の量は変わらないので、後で自社の持ち出しになるか、品質を落とすことになるからです。
金額を下げるなら、減らせるのは範囲か、作業を誰が担当するかです。たとえば、次のように選べる形で返します。
ご予算の件、ありがとうございます。作業の量を変えずに金額だけを下げることは難しいのですが、次の形でしたら調整できます。
A. 下層ページの型を減らす(デザインとコーディングで4人日、20万円の減額)
B. 構成案を貴社で作成いただく(2人日、10万円の減額)
C. 公開後の対応を別の時期に分ける(今回の金額は下がり、公開後に改めてお見積もりします)
例の金額は、前の記入例と同じ1人日5万円の仮定で計算したものです。工数の内訳があると、何を外せばいくら下がるかを具体的に話せます。これは工数を見せる大きな利点です。
進捗で工数をどう見るか|予定と実績の差の読み方
進捗を工数で見るときは、使った工数ではなく、残りの工数を見積もり直して判断します。使った工数だけでは、作業がどこまで進んだかは分からないからです。
例を挙げます。見積もり8人日の作業に6人日使ったとします。使った割合は75%です。ところが担当者に聞くと、残りはあと5人日かかるとのことでした。
| 項目 | 人日 |
|---|---|
| 予定の工数 | 8 |
| 使った工数(実績) | 6 |
| 残りの工数(見積もり直し) | 5 |
| 完了までの見込み | 11 |
| 予定との差 | +3 |
使った割合だけ見れば75%ですが、見込みの11人日に対しては6÷11で約55%しか進んでいません。週に1回、作業ごとに「残りあと何人日か」を聞くだけで、超過に早く気づけます。
差が出たら、原因を4つに分ける
予定と実績の差は、原因によって話す相手と次の手が変わります。
| 差の原因 | 増えるもの | 話す相手 | 次の手 |
|---|---|---|---|
| 見積もりの漏れ・甘さ | 工数 | 社内 | 原則は自社で引き受け、次の見積もりの前提に反映する |
| 範囲の増加 | 工数と期間 | 顧客 | 変更として見積もり、承認を得てから着手する |
| 顧客の確認待ち・素材待ち | 期間 | 顧客 | 前提との差を示し、日程を相談する |
| 手戻り | 工数と期間 | 原因による | 原因を分けて再発を防ぐ |
顧客の待ちは工数を増やさないので、工数だけ見ていると気づけません。工数と期間を別々に記録すると、遅れの原因を正しく説明できます。
見積もりがずれる原因については、調査もあります。一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の『企業IT動向調査報告書2026』は、システム開発で予算を超過した、または工期が遅延したと答えた企業に要因を聞いています(複数回答)。予算では「想定以上の現行業務・システムの複雑さ」が51.4%、「計画時の考慮不足」が51.0%、「仕様変更の多発」が48.6%(n=245)、工期では「計画時の考慮不足」が52.5%、「想定以上の現行業務・システムの複雑さ」が48.8%、「社員のスキル不足」が46.5%、「仕様変更の多発」が42.4%(n=297)でした。
出典: 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会『企業IT動向調査報告書2026』 図表7-1-7、図表7-1-8(2025年度調査)。2026年11月4日に確認。
これは発注側の企業に聞いたシステム開発の結果で、Web制作やデザインなどの受託全般を測ったものではありません。工数のズレの発生率そのものでもありません。それでも、予算と工期のどちらでも「計画時の考慮不足」と「仕様変更の多発」が4割を超えていることは、前提を書き、変更を変更として扱う理由の1つになります。
顧客に工数を見せるかは、契約で変える
請負の案件の進捗報告では、工数の消化率より、終わった作業、残りの作業、顧客にお願いしている確認と期限を伝えるほうが役に立ちます。顧客向けの報告の項目は顧客向け進捗報告の書き方で扱っています。稼働に対して払う準委任では、作業内容と時間の報告そのものが合意事項になるので、毎月の時間を見せます。
工数が増えそうなときの伝え方|文例3つ
工数が増えそうなときは、超えた後ではなく、超えると分かった時点で、作業を進める前に伝えます。伝えるのは「何が変わったか」「工数と納期への影響」「選べる案」の3点です。金額の話を切り出しにくいときほど、前提を書いた見積もりが効きます。個人の頼みごとではなく、合意した前提との差の話になるからです。
文例1: 範囲が増えたとき
お問い合わせフォームの追加について、影響を確認しました。当初の範囲に含まれていないため、追加の工数として3人日を見込んでいます。納期は5営業日後ろになります。
進め方は次の2つをご提案します。
A. 今回追加する(追加費用をお見積もりします。納期は変更後の日程になります)
B. 今回は当初の範囲で公開し、公開後に対応する(納期は変わりません)
どちらで進めるか、今週金曜までにご相談させてください。
文例2: 顧客の確認待ちで日程がずれるとき
構成案のご確認について、当初は3営業日を想定しておりました。現時点で5営業日が経過しているため、公開予定日は2営業日後ろになる見込みです。作業の量は変わらないため、費用の変更はありません。
10日までにご確認いただければ、この日程で進められます。難しい場合は、確認いただける日をお知らせください。日程を組み直します。
文例3: 自社の見積もりが甘かったとき
実装を進めたところ、既存の仕組みとの連携に、見積もりより時間がかかることが分かりました。こちらの見積もりの漏れですので、費用は当初のままとします。一方で、納期は3営業日後ろになる見込みです。
公開日に間に合わせる必要がある場合は、先にトップと主要ページを公開し、残りを3営業日後に追加する進め方もできます。ご都合をお聞かせください。
文例3のように、原因が自社にあるときは費用の話と納期の話を分けて、はっきり書きます。範囲の線引きや追加依頼への返し方は、スコープクリープの防ぎ方と返し方の文例で詳しく扱っています。
工数管理の始め方|エクセルで足りる範囲とツールが要るとき
工数管理とは、作業ごとの予定と実績の工数を記録して、見積もりや計画に生かすことです。まずは表1枚で始められます。記録する列は次の6つで足ります。下の表は記入の例です。
| 日付 | 案件 | 作業 | 担当 | 予定(時間) | 実績(時間) |
|---|---|---|---|---|---|
| 11/4 | A社サイト | デザイン | 山田 | 8 | 6 |
| 11/4 | A社サイト | 定例・議事録 | 山田 | 2 | 2 |
エクセルなら、案件ごとの合計は SUMIF で出せます。A列からF列に上の順で並べ、案件名の合計を出すなら =SUMIF(B:B,"A社サイト",F:F) です。時間を人日に直すには8で割ります。
| 状況 | 向いている道具 |
|---|---|
| 数人で、同時に動く案件が少ない | エクセル、スプレッドシート |
| 1人が複数の案件を兼務し、毎日の入力が続かない | 作業時間の記録や集計ができる専用の製品 |
| 勤怠や原価の計算とつなげたい | 勤怠・原価の管理と連携できる製品 |
工数や作業時間の記録をテーマにした製品には、CrowdLog、TimeCrowd、TeamSpirit などがあります。機能と料金は変わるので、選ぶときは各社の公式情報で確かめてください。
続けるコツは、細かくしすぎないことです。分単位で記録しようとすると入力が止まります。見積もりの見直しに使うのが目的なら、30分か1時間の単位で十分です。
記録を次の見積もりに使う
工数を記録する一番の見返りは、次の見積もりの精度が上がることです。案件が終わったら、作業ごとに予定と実績を並べて、次の3つを確かめます。
- 差が大きかった作業はどれか: たとえばデザインの修正だけいつも1.5倍かかっているなら、次からは修正の行を厚くするか、修正の回数の前提を見直します。
- 見積もりになかった作業は何か: 実績にだけ出てくる作業は、次の見積もりの行に足します。問い合わせ対応や環境の準備は、最初の見積もりから抜けがちです。
- 差の原因は4つのどれか: 見積もりの甘さと範囲の増加を混ぜると、次の数字を直す根拠になりません。範囲の増加は、変更として別に記録します。
大がかりな分析は要りません。同じ種類の案件の記録がたまるほど、余裕をどのくらい持つかを自社の数字で話せるようになります。担当者ごとの速さを評価する目的で使うと、正直な記録が集まらなくなるので、作業と見積もりの見直しに使うことを先に伝えておきます。
工数を減らすときは、記録の多い順に見る
工数の削減は、記録を見て、時間を多く使っている作業から手をつけます。よく候補になるのは次の4つです。
- やり直し: 確認漏れや前提の変更による作り直しです。原因の分け方と金額への換算は手戻りの原因4類型で扱っています。
- 定例と報告: 説明のためだけの会議がないかを見直します。
- 繰り返しの作業: 見積書、議事録、報告書はひな形を用意します。
- 範囲: そもそもやらなくてよい作業を、顧客と相談して外します。
作業時間を減らしても、確認待ちの日数は縮みません。期間を縮めたい場合は、工数ではなく待ちのほうを見てください。
状況別の読み分け早見表
自分の状況に近い行から読むと、必要なところにすぐたどり着けます。
| 当てはまる状況 | 次に読むところ |
|---|---|
| 人日と人月の換算だけ確認したい | 「工数の単位」の早見表 |
| 人数や期間を計算したい | 「工数の計算方法」の例題 |
| 見積もりを出す直前 | 「受託案件で工数を見積もる手順」と記入例 |
| 契約の前に、何を合意するか知りたい | 「見積もりと契約で工数をどう合意するか」の文例 |
| 案件が予定どおりに進んでいない | 「進捗で工数をどう見るか」 |
| 顧客に追加や遅れを伝える必要がある | 「工数が増えそうなときの伝え方」の文例 |
よくある質問(FAQ)
工数とは簡単に言うと何ですか?
作業を終えるのに必要な量を、人数と時間を掛けて表したものです。3人で2日かかる作業なら6人日で、1人なら6日かかる量を意味します。かかる日数そのものではなく、作業の量を表す数字です。
人日と人月の違いは何ですか?
人日は1人が1日でこなす量、人月は1人が1か月でこなす量です。一般的には1人日を8時間、1人月を20人日(160時間)として計算します。ただし法律の決まりではないので、契約では何時間を指すのかを書いておきます。
工数の計算方法を教えてください。
「工数=人数×期間」で計算します。必要な人数は工数を期間で割り、期間は工数を人数で割って出します。兼務で稼働が50%なら、1人を0.5人として計算します。顧客の確認待ちは工数に含めず、期間に足します。
工数と工期の違いは何ですか?
工数は作業の量、工期は始めてから終わるまでの長さです。同じ10人日でも、2人が専任なら工期は5営業日、2人が50%の兼務なら10営業日です。顧客の確認待ちがあると、工数は変わらず工期だけが延びます。
工数は英語で何と言いますか?
man-hour がよく使われ、人日は man-day や person-day、人月は man-month や person-month と表します。作業量という意味全般を指すときは effort という語も使われます。
工数の言い換えにはどんな言葉がありますか?
相手に伝わる言葉を選びます。「工数がかかる」は「作業に時間がかかる」、「工数を確保する」は「担当者の時間を確保する」、顧客に対する「工数をいただく」は「お手間をおかけする」と言い換えられます。
見積もりの余裕はどのくらい持てばいいですか?
公的な基準はありません。一律の割合を決めるより、自社の過去の案件で見積もりと実績がどれだけ離れていたかを見て決めるほうが、根拠を説明できます。各行に上乗せせず、別の行で持つと管理しやすくなります。
請負で工数が見積もりを超えたら、追加で請求できますか?
請負は仕事の完成に報酬を払う契約なので、工数が増えただけで当然に増額されるわけではありません。範囲や前提が変わったのなら、変更として見積もり、顧客と合意します。実際の扱いは契約書の条項で決まります。
まとめ
工数は作業の量で、「人数×時間」で計算します。よく使う換算は1人日=8時間、1人月=20人日=160時間ですが、これは前提であって決まりではありません。2027年を例にとれば、1か月は144〜184時間の幅があります。
計算の式は簡単でも、実際の案件では兼務、1日の中の作業時間、待ちの3つで計算どおりに進みません。工数と期間を分けて考え、顧客には日付で答えて、工数は根拠として添えます。
受託案件では、見積もりの段階で「この数字がどの前提で成り立つか」を書き、契約の型に合わせて工数の扱いを合意します。進捗は残りの工数で判断し、増えそうなときは超える前に、変わったこと、影響、選べる案の3点を伝えます。
工数を出す土台になる作業の分け方はWBSの作り方に、前提が崩れたときの扱いはスコープクリープの記事にまとめています。
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