根回しとは?意味・言い換え・英語と、悪い根回しにしないやり方・例文
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根回しとは?意味・言い換え・英語と、悪い根回しにしないやり方・例文

著者: Terasu 編集部

根回し(ねまわし)とは、会議や交渉で物事をうまく運ぶために、正式な場の前に関係者へ個別に話を通し、合意の下地をつくっておくことである。もとは、樹木を植え替える1〜2年前に根を切り、細い根を出させて移植後に根づきやすくする園芸の作業を指す言葉で、そこから「事前に手を打っておく」という意味に転じた。

この記事のポイント(TL;DR)

  • 根回しの意味は辞書では2つあります。植木の移植の下準備と、交渉や会議の下準備です。ビジネスで使うのは後者で、言い換えるなら「事前相談」「すり合わせ」「地ならし」などです。6つの言い換えの違いを表にしました。
  • 英語ではそのまま nemawashi と書かれ、トヨタ生産方式をもとにしたリーン経営の用語として、英語の用語辞典にも載っています。日常の英語なら lay the groundwork、get buy-in が近い言い方です。
  • 根回しが「密室」「裏工作」と嫌われるのは、決定が正式な場の外で終わってしまうときです。本記事では、良い根回しと悪い根回しを「誰に開いているか」と「どこで決まり、記録が残るか」の2つで見分けます。
  • やり方は5ステップです。相手と順番を決め、伝える中身を絞り、懸念を聞いて案を直し、最後は正式な場で決めて記録に残します。上司・他部署・決裁者・メールの場面別に、そのまま使える例文を載せました。
  • 受託・制作・コンサルの仕事では、根回しの主戦場は自社ではなく顧客の会社の中にあることが多くなります。先方の担当者が社内に話を通すのを、外の会社としてどう手伝うかを最後に扱います。

根回しとは|意味・読み方・語源

根回しとは、正式な会議や決裁の前に、関係者一人ひとりへ案を伝えて意見を聞き、合意の下地をつくっておくことです。読み方は「ねまわし」です。

小学館の『デジタル大辞泉』は、根回しの意味を2つ載せています。1つは樹木の移植の1、2年前に、広がった根を根もとを中心に残して切り、細い根が出るのを促すこと。もう1つは、交渉や会議などで事をうまく運ぶために、あらかじめ手を打っておくことで、「下工作」とも言い換えています。

出典: 『デジタル大辞泉』(小学館)、『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』、『改訂新版 世界大百科事典』(平凡社)の「根回し」の項(コトバンク「根回し」)。2026年10月30日に確認。

植木の根回しから、仕事の根回しへ

語源の植木の作業を知っておくと、仕事の根回しで何が大事かが分かりやすくなります。

大きな木をいきなり掘り起こして別の場所に植えると、太い根が切れて水を吸えなくなり、枯れてしまうことがあります。そこで植え替えの1〜2年前に、根もとの周りを掘って太い根を切り、幹の近くに細い根をたくさん出させておきます。こうしておくと、植え替えたあとも新しい土に根づきやすくなります。

『ブリタニカ国際大百科事典』は、この園芸の用語が「事前に工作する」という意味合いから、会議や交渉の場面に転用されたと説明しています。

仕事の根回しに置き換えると、こうなります。

  • いきなり植え替えない:新しい案を、正式な会議でいきなり全員に見せない
  • 細い根を先に出させる:関係者それぞれが、その案を自分の仕事にどう関わるかを先に考えられる時間をつくる
  • 植え替えたあと根づかせる:決まったあと、関係者が案を自分のこととして動けるようにする

つまり根回しの目的は、会議を通すことそのものではなく、決まったあとに案が根づくことにあります。ここを外すと、根回しは「会議で反対が出ないようにする工作」に縮んでしまいます。

辞書の説明に「非公式」「個別」と書かれている意味

『世界大百科事典』は、根回しを、非公式な場で、通常は個別に、説得や妥協を通じて事前に合意形成を図る政治技術と説明しています。『ブリタニカ国際大百科事典』も、非公式の場で合意の形成をはかること、と書き、「下工作」「下相談」を言い換えに挙げています。

「非公式」と「個別」の2語に、根回しの長所と短所の両方が入っています。非公式で個別だから、相手は会議の場では言いにくい本音や懸念を話せます。一方で、非公式で個別だから、誰に何を話したかが外から見えず、「一部の人だけで決めた」という不信も生みます。この両面をどう扱うかは、後半の「良い根回しと悪い根回し」の章で具体的に見ていきます。

根回しと稟議・会議・ロビー活動の違い

根回しと混同されやすい言葉を、どこで行うか、何を決めるかで分けておきます。

言葉どこで行うか何をするか根回しとの関係
根回し正式な場の前・非公式・個別意見を聞き、案を直し、合意の下地をつくる―
稟議社内の正式な決裁の手続き書面を回して承認者の決裁を得る稟議を回す前に根回しをする
会議正式な場・関係者が一堂に会する議論して決める会議で決める前に根回しをする
ロビー活動会社の外・行政や議会に向けて政策や制度に意見を届ける対象が社外の公的な機関で、目的も違う

ポイントは、根回しは稟議や会議の代わりにはならないということです。根回しで了承を得ても、正式な決定は稟議や会議で行います。この順番が逆になったり、正式な手続きが省かれたりすると、根回しは「裏で決める」行為に変わります。


根回しの言い換え・類語と使い分け

根回しは便利な言葉ですが、「裏で手を回す」という響きを嫌う人もいます。社外へのメールや、上司への報告では、場面に合った言い換えを使うほうが角が立ちません。

よく使う6つの言い換えを、何をする行為か、どんな場面で使うかで並べると次のとおりです。

言い換え何をする行為か向いている場面使い方の例
事前相談案を固める前に、相手の意見を聞く上司・他部署・顧客への最も無難な言い方「会議の前に一度ご相談させてください」
すり合わせ双方の考えの違いを確かめ、そろえる部署間・会社間で認識の差があるとき「仕様の認識をすり合わせたいです」
地ならし反対や障害が出そうな点を先に減らしておく社内の会話。社外には使わない「役員会の前に地ならしをしておこう」
下打ち合わせ本番の会議の前に、少人数で段取りを話す会議の議題・順番・資料を決めるとき「明日の定例の下打ち合わせをしませんか」
内諾を取る正式な決定の前に、非公式に了承をもらう決裁者・発注者の意向を先に確かめるとき「部長から内諾はいただいています」
調整予定・条件・利害を合わせる広く使えるが、意味がぼやけやすい「関係部署と調整のうえ、ご連絡します」

使い分けの目安は、相手に何をお願いしているかです。意見を聞きたいなら「事前相談」、違いをそろえたいなら「すり合わせ」、了承がほしいなら「内諾」と言うと、相手は何を求められているかがすぐ分かります。

逆に「根回し」と「調整」は、何をしてほしいのかが伝わりにくい言葉です。社内の会話で「ちょっと根回ししておいて」と言うのは構いませんが、頼まれた側が困らないように、「誰に」「何を」「いつまでに」を添えて伝えると、意図のずれが起きにくくなります。

「下工作」「裏工作」は避ける

辞書では「下工作」も言い換えに挙がりますが、今の仕事の場面では、相手を出し抜くような響きが強くなります。「裏工作」はさらに悪い意味です。自分がしていることを説明するときには使わず、「事前相談」か「すり合わせ」と言いましょう。

「根回しする」を相手に言うときの敬語

自分の行為なので「根回しさせていただきます」と言いたくなりますが、相手に向かって「あなたに根回しします」と言うのは不自然です。根回しは、相手から見ると「事前に相談を受けた」ことにあたります。相手に向けては「事前にご相談させてください」「先にお耳に入れておきたいことがあります」と言い換えるのが自然です。


根回しは英語で何と言う?|nemawashi と近い表現

根回しは英語でも、そのまま nemawashi と書かれることがあります。トヨタ生産方式をもとにしたリーン経営の用語として、英語圏でも使われているためです。

リーン経営の普及団体 Lean Enterprise Institute の用語辞典は、nemawashi を「提案について、まず考え方を、次に計画を、経営層や関係者と一緒に評価し、意見を集め、抵抗を予測し、組織の中の他の見方や優先順位とそろえることで、提案への受け入れと事前の了承を得るプロセス」と説明しています(訳は編集部)。そのうえで、正式な承認は、最終版の提案を承認する会議で行われると書いています。

出典: Lean Enterprise Institute, Lexicon「Nemawashi」。2026年10月30日に確認。なお、同辞典は言葉の直訳を「植え付けのための土の準備」と紹介しています。日本語の辞書が説明する「移植前に根を切って細い根を出させる」作業とは、たとえ方が少し違います。

トヨタの経営を研究した Jeffrey K. Liker の著書『The Toyota Way』(2004年)も、14の原則の13番目を「時間をかけて、すべての選択肢を十分に検討し、合意によって決める。実行は素早く」(訳は編集部)としています(O'Reilly 版の第19章の見出し)。決めるまでに時間をかけるのは、決めたあとに早く動くためだ、という考え方です。

日常の英語で根回しに近い意味を伝えたいときは、次のような言い方があります。

英語の表現ニュアンス例文
nemawashiリーン経営・トヨタ方式の用語。相手が知っていれば通じるWe did some nemawashi before the board meeting.
lay the groundwork下準備をする。最も広く使えるLet's lay the groundwork before we present the proposal.
get buy-in関係者に納得・賛同してもらうWe need to get buy-in from the finance team first.
run it by someone正式に出す前に、ある人に見てもらうCan I run this by you before the meeting?
touch base軽く連絡を取って状況をそろえるI'll touch base with legal this week.

英語で「根回しをした」と言うと、相手によっては「裏で話を決めた」と受け取られることがあります。海外の取引先には、nemawashi より「会議の前に関係者の意見を聞いておいた(we gathered input from stakeholders before the meeting)」と、何をしたかを具体的に言うほうが誤解されません。


根回しは必要か|良い根回しと悪い根回しの線引き

根回しは必要です。ただし、どこで決まるかを間違えると、組織にとって害になります。

「根回しは古い」「日本的な悪習だ」という声もあります。けれども、関係者の意見を先に聞き、抵抗を予測して案を直すこと自体は、Lean Enterprise Institute の用語辞典のように、英語圏のリーン経営でも合意づくりの手順として紹介されています。問題になるのは、根回しが正式な場の代わりになってしまったときです。

根回しが効く場面・要らない場面

根回しの手間が見合うのは、次のような場面です。

  • 関係する部署や人が多い:一度の会議で全員の懸念を拾いきれない
  • 相手にとって変化が大きい:仕事のやり方、予算、人の配置が変わる
  • 決裁が何段階もある:稟議が複数の承認者を回る
  • 一度決めると戻しにくい:契約、システムの入れ替え、採用
  • 反対しそうな人がいる:会議で初めて聞くと、内容より「聞いていない」ことに反発する

反対に、次のような場面では根回しは要りません。かえって決定を遅らせます。

  • 担当者の裁量で決めてよいことを、念のため全員に聞いて回る
  • 関係者が2〜3人しかおらず、会議で話せば済む
  • 急いで決める必要があり、決めたあとに直せる

良い根回しと悪い根回しを分ける2つの軸

良い根回しと悪い根回しの違いは、話す内容の良し悪しではありません。次の2つで見分けられます。

  1. 誰に開いているか:関係する人全員に話を聞いているか。反対しそうな人を外していないか
  2. どこで決まり、記録が残るか:最終的な決定が正式な場で行われ、理由とともに記録されているか

この2つを組み合わせると、根回しは4つの型に分かれます。

根回しを、関係者全員に開いているか一部だけか、決定が正式な場で記録されるか正式な場の外で終わるか、の2軸で4つの型に分けた図。全員に開いていて正式な場で決めて記録するのが良い根回し。全員に話を聞いたが決定は正式な場の外で終わるのは記録の残らない根回し。一部だけに話して正式な場で決めるのは反対者を外した根回し。一部だけに話して正式な場の外で決まるのは密室の決定
図: 良い根回しは、関係者全員に話を聞き、決定は正式な場で行って理由とともに記録します。どちらかが欠けると、後から「聞いていない」「いつ決まったのか」という不信が残ります。
  • 良い根回し:関係者全員の意見を先に聞き、案を直したうえで、正式な会議や決裁で決める。決定と理由が記録に残る
  • 記録の残らない根回し:全員に話は聞いたが、個別の会話の中で事実上決まってしまい、会議は追認だけになる。誰が何に同意したのかが後から辿れない
  • 反対者を外した根回し:賛成しそうな人だけに先に話し、反対しそうな人には会議で初めて見せる。形式上は正式な場で決まるが、外された人の不信が残る
  • 密室の決定:一部の人だけで話を決め、正式な場も記録もない。世間で「根回しは悪い」と言われるのは、主にこの型です

Lean Enterprise Institute の用語辞典が「正式な承認は会議で行われる」と書いているのも、この線引きと同じ考え方です。根回しは決定の前の準備であって、決定そのものではありません。

「記録の残らない根回し」がいちばん見落とされやすい

4つの型のうち、本人に悪気がないまま起きやすいのが「記録の残らない根回し」です。

個別の会話で「それでいいよ」と言ってもらえると、根回しをした側は決まったつもりになります。ところが、その「いいよ」は、どの案のどこまでへの同意だったのかが残っていません。数か月後に「あのとき賛成したのは方向性だけで、予算までは認めていない」と言われると、反論する材料がありません。

これを防ぐ方法は単純で、根回しで聞いた意見と、最後に正式な場で決まったことを、分けて書き残すことです。具体的な書き方は、本記事の後半「根回しで決まったことを残す」で扱います。


根回しのやり方|5ステップ

根回しは、思いつきで関係者を回ると逆効果になります。次の5つの手順で進めると、漏れと順番の間違いを防げます。

ステップ1:話を通す相手を書き出す

最初に、その案で影響を受ける人と、決定に関わる人をすべて書き出します。

  • 決める人:最終的に承認する決裁者
  • 意見を求められる人:決裁者が判断の前に意見を聞く人。経理・法務・情報システムなど
  • 影響を受ける人:決まったあとに仕事のやり方が変わる人
  • 反対しそうな人:過去に似た案に反対した人、予算や人を取られる部署

書き出すときに大事なのは、4つ目を外さないことです。反対しそうな人ほど、先に話を聞く価値があります。会議で初めて聞かされると、案の中身よりも「自分は外された」ことに反発するからです。

関係者の整理には、誰が決め、誰が影響を与えるかを1枚にまとめるステークホルダーマップの考え方も役に立ちます。作り方はステークホルダーマップの作り方とテンプレートで扱っています。

ステップ2:話す順番を決める

順番の基本は、直属の上司が最初です。上司より先に他部署や上の役職者に話すと、上司は「自分を飛ばされた」と感じ、案に協力しにくくなります。

そのうえで、次の順で回ることが多くなります。

  1. 直属の上司(進め方と、誰に話すべきかを相談する)
  2. 意見を求められる人(経理・法務・情報システムなど、懸念を出しそうな部署)
  3. 影響を受ける部署の責任者
  4. 決裁者(上司と一緒に、または上司経由で)

決裁者に直接話してよいかは、組織によって違います。迷ったら、ステップ1の時点で上司に「誰に、どの順で話すのがよいか」を相談するのが確実です。この相談自体が、上司への根回しになります。

ステップ3:伝える中身を1枚に絞る

根回しで渡すのは、完成した資料ではなく、相手が5分で判断できる要点です。次の4点に絞ると伝わります。

  • 何を決めたいのか(結論)
  • なぜ今なのか(背景と、決めないとどうなるか)
  • 相手にどう関わるか(相手の部署の仕事・予算・人への影響)
  • 相手に何をお願いしたいのか(意見がほしい、了承がほしい、会議で発言してほしい)

3つ目の「相手にどう関わるか」が、根回しの中身の中心です。全員に同じ説明をするのではなく、経理には費用と支払いの時期、法務には契約の条件、現場には作業の変化、と相手ごとに話す順番を変えます。

ステップ4:懸念を聞いて、案を直す

根回しで最も大事なのは、話すことより聞くことです。相手から出た懸念は、次のどれかで扱います。

  • 案を直して解消する:例)「最初の3か月で効果を見て、続けるかを決める」と期間を区切る
  • 資料に答えを書き足す:例)情報システム部門の質問に、セキュリティの説明を付ける
  • 解消できないまま、会議で判断してもらう:懸念と、それでも進める理由を並べて書く

3つ目を避けないことが大事です。根回しの目的は懸念をゼロにすることではありません。解消できない懸念が残っていることを、決裁者が知ったうえで決められる状態をつくることです。懸念を隠して会議を通すと、それはステップ1で書き出した人への裏切りになります。

稟議書を回す場面なら、聞いた懸念をリスクの欄に書き込み、先回りで答えておくと回覧が止まりにくくなります。稟議書の項目の書き方は稟議書の書き方と例文で詳しく扱っています。

ステップ5:正式な場で決め、決定と理由を記録する

最後は必ず、会議・決裁・稟議といった正式な場で決めます。根回しで全員の了承が取れていても、この手順は省きません。

正式な場では、次の3つを記録に残します。

  • 決まったこと:何を、いつから、誰が行うか
  • 決まった理由:比較した案と、選んだ理由
  • 残った懸念と、その扱い:誰がいつ見直すか

根回しで聞いた意見のうち、案に反映したものと、反映しなかったものも、分けて書いておくと親切です。意見を出した人は、自分の意見がどう扱われたかを知ることができます。反映されなかった人ほど、その理由が書かれていることで、次に協力しやすくなります。


場面別・根回しの例文

ここからは、そのまま使える例文です。社名・人名・内容は、ご自身の状況に置き換えてください。

上司に進め方を相談する(口頭・チャット)

課長、来月の部長会で、問い合わせ対応の当番制を見直す提案をしたいと考えています。 正式に出す前に、どなたにどの順番でお話ししておくのがよいか、ご相談させてください。 影響が大きいのは営業事務とカスタマーサポートなので、両方の責任者には先にお伝えしたいと思っています。

ポイントは、「何を」「いつの場で」決めたいかを最初に言い、そのうえで相手に何をお願いしたいか(誰にどの順で話すかの相談)をはっきりさせることです。

他部署の責任者に、事前に意見を聞く

〇〇部の△△さん、来月の部長会に出す予定の提案について、先にご意見をいただけないでしょうか。 問い合わせの当番を部署をまたいで回す案で、〇〇部の皆さんにも月に2日ほど当番に入っていただく形になります。 案はまだ固めていないので、無理がある点や、こうしたほうがよいという点があれば、そのまま反映したいと考えています。 15分ほどお時間をいただけますか。

「案はまだ固めていない」と伝えるのは、相手の意見を本当に反映するつもりがあるときだけにしましょう。固まった案を「相談」として見せると、相手は後から気づいて不信を持ちます。

会議の前に、決裁者へ要点を伝える

部長、来週の部長会でご判断いただきたい件を、先に1枚にまとめました。 結論は、問い合わせの当番を3部署で回す形に変えることです。 経理・カスタマーサポート・営業事務の責任者にはご意見をいただき、当番の日数を月3日から2日に減らしました。 営業事務からは、繁忙期の月末だけは外してほしいという声が残っています。こちらは会議でご判断いただきたいと考えています。

決裁者に伝えるときは、誰に話を聞いたかと、残っている懸念を必ず入れます。全員が賛成しているように見せたくなりますが、残った懸念を先に伝えておくほうが、決裁者は会議で落ち着いて判断できます。

意見をくれた人に、決まったことを返す

△△さん、先日は当番制の案にご意見をいただき、ありがとうございました。 昨日の部長会で、3部署で当番を回す形に決まりました。 いただいたご意見のうち、当番を月3日から2日に減らす点は反映しています。 月末を外す点は今回は見送りとなり、3か月後に当番の負担を見直すときにあらためて検討することになりました。 議事録は共有フォルダに置いていますので、ご確認ください。

根回しで意見をくれた人に結果を返す連絡は、省かれがちです。けれども、この一通があるかどうかで、次に相談したときの相手の反応は変わります。反映した意見と、反映しなかった意見と、その理由を分けて書くのがポイントです。見送った意見にも「いつ、どこで再検討するか」を添えると、相手は自分の意見が消えたのではないと分かります。

メールで事前相談をお願いする(社外)

件名:〇月〇日の定例会議の前に、ご相談させてください

株式会社〇〇 △△様

いつもお世話になっております。株式会社□□の◇◇です。

〇月〇日の定例会議で、公開日の延期をご提案する予定です。 会議の場で初めてお伝えするよりも、先に背景をご説明し、△△様のご意見をうかがったうえで案をまとめたいと考えております。

・延期の理由:掲載する写真の差し替えが〇月〇日になったため ・ご提案の内容:公開日を〇月〇日から〇月〇日に変更 ・ご相談したいこと:御社の社内で、どなたにご説明が必要か

15分ほど、お電話かオンラインでお時間をいただけますと幸いです。 何卒よろしくお願いいたします。

社外の相手には「根回し」という言葉は使わず、「事前にご相談」「先にご説明」と書きます。そして、相手の会社の中で誰に説明が必要かを聞く一文を入れておくと、次の章で扱う「顧客の社内の根回し」につながります。


顧客の会社の中の根回しを手伝う|受託・制作・コンサルの場合

受託・制作・コンサルの仕事では、決めるのは顧客の会社です。自社の中で根回しをどれだけ丁寧にしても、顧客の社内で話が通らなければ、案件は前に進みません。

顧客の社内の根回しをするのは、先方の担当者です。外の会社であるこちらは、決裁者や他部署に直接話しに行くことはできません。できるのは、担当者が社内で話を通しやすいように、材料と段取りを用意することです。

受託側と顧客の会社の関係を示した図。受託側は先方の担当者に、決裁者向けの1枚要約、想定問答、比較した案と選んだ理由、決まったことと未決のことの一覧を渡す。先方の担当者は、それをもとに社内の決裁者、情報システム部門、法務・経理、現場の利用部門に話を通す。受託側から決裁者への直接の働きかけは、担当者の頭越しになるため避ける
図: 受託側が話すのは先方の担当者です。担当者が社内の決裁者・情報システム・法務や経理・現場に話を通すための材料を、相手ごとに分けて渡します。

担当者の頭越しに決裁者へ話さない

顧客の社内で話が止まると、つい決裁者に直接連絡したくなります。けれども、担当者を飛ばして決裁者に話すと、担当者は社内での立場を失い、その後の協力を得にくくなります。これは、自社の中で上司を飛ばして他部署に話すのと同じ構図です。

決裁者に会う必要があるときは、「〇〇部長にも一度ご説明の機会をいただけないでしょうか」と担当者に相談し、担当者が同席する形で会います。

先方の担当者に渡す4つの材料

担当者が社内で話を通すときに、手元にあると助かるのは次の4つです。

材料誰に話すときに使うか入れる中身
決裁者向けの1枚要約決裁者・役員結論、費用、期間、決めないとどうなるか
想定問答情報システム・法務・経理各部署が聞きそうな質問と、その答え
比較した案と選んだ理由決裁者・利用部門他の案と比べてなぜこの案か
決まったことと未決のことの一覧担当者自身と、途中から加わる人何が決まり、何がまだ決まっていないか

4つ目の一覧は見落とされがちですが、担当者の負担を最も減らします。顧客の社内で「前回の打ち合わせで何が決まったんだっけ」と聞かれるたびに、担当者がメールをさかのぼって説明する手間がなくなるからです。

稟議を通すための材料(費用対効果の試算、セキュリティの質問への回答、他社比較など)の作り方は、顧客の稟議を通すために営業が渡せる材料で詳しく扱っています。営業向けの記事ですが、受託・制作の提案や、契約後の追加の発注でも同じ材料が使えます。

担当者に聞いておく3つの質問

材料を作る前に、担当者に次の3つを聞いておくと、渡すものが的外れになりません。

  1. 社内で誰の了承が必要ですか(決裁者と、意見を求められる部署)
  2. いつまでに、どの会議で決まりますか(会議の日と、資料の締め切り)
  3. 社内で反対や心配が出そうなのは、どんな点ですか

3つ目は、担当者自身も言いにくいことがあります。「同じような案件で、よく出る質問は〇〇と△△です。御社ではいかがですか」と、よくある懸念を例に挙げて聞くと答えやすくなります。

先方の社内で資料が読まれているかを確かめる

根回しの材料を渡しても、担当者が社内で回せているかは、外からは分かりません。打ち合わせで「その後いかがですか」と聞くだけでなく、資料を渡す場所を決めておくと状況をつかみやすくなります。

たとえば、顧客と共有するワークスペースに資料を置き、先方の関係者をそこに招待しておくと、招待した相手が資料を開いたか、どのページに時間を使ったかが分かるツールもあります。決裁者向けの要約が開かれていないなら、まだ社内で回っていない可能性がある、と判断できます。


根回しで決まったことを残す|口頭の合意を消さないために

根回しは、個別の会話で進むため、記録が残りにくいという弱点があります。良い根回しを「良い」ままにしておくには、聞いた意見と決まったことを残す仕組みが要ります。

根回しの記録は2種類に分ける

記録は、次の2つを分けて残します。

  • 根回しで聞いた意見のメモ:誰から、いつ、どんな意見や懸念を聞いたか。案にどう反映したか
  • 正式な場で決まったことの記録:何が、いつ、誰の判断で決まり、理由は何か

1つ目は、社内向けのメモで構いません。2つ目は、関係者全員が見られる場所に置きます。2つを混ぜると、「個別の会話で聞いた意見」が「決まったこと」のように扱われ、後から「そんなことには同意していない」という食い違いが起きます。

打ち合わせで決まったことを、言った言わないにならない形で残す方法は「言った言わない」をなくす方法で、正式な会議の議事録の書き方は議事録の書き方とテンプレートで扱っています。

顧客と進める案件では、決まったことを顧客と同じ場所に置く

受託・制作の案件では、根回しの結果として顧客の社内で決まったことが、メールや電話でこちらに伝わってきます。その内容が担当者とのメールの中にしか残っていないと、先方の担当者が異動したときや、決裁者が交代したときに、「いつ、なぜそう決まったのか」を誰も説明できなくなります。

決まったことと、その理由と、元になった打ち合わせの記録を、案件ごとに顧客と同じ場所に置いておくと、途中から加わった人も経緯を追えます。根回しで積み上げた合意が、担当者の記憶ではなく記録として残ります。

顧客の社内で決まったことを、案件ごとの共有ワークスペースに残す

Terasuは、顧客と進める案件の共有ワークスペースです。ページ・資料・議事録・タスクを案件ごとのRoomに集め、先方の関係者を招待できます。招待した相手が資料を開いたかが分かり、決まったことは日付と元の記録つきで決定タイムラインに並びます(決定タイムラインは社内だけに表示)。14日間無料で、クレジットカードは不要です。

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状況別の読み分け早見表

根回しについて調べている方の状況はさまざまです。ご自身に近い状況から、読む場所を選んでください。

当てはまる状況次に読むところ
言葉の意味だけ確かめたい冒頭の定義と「根回しとは|意味・読み方・語源」
メールや報告で使う言い換えを探している「根回しの言い換え・類語と使い分け」の表
英語の資料や海外の取引先とのやり取りで使いたい「根回しは英語で何と言う?」
根回しは悪いことではないかと迷っている「良い根回しと悪い根回しの線引き」と図
来週の会議に向けて、今から根回しを始めたい「根回しのやり方|5ステップ」と「場面別・根回しの例文」
稟議書を通したい稟議書の書き方と例文
顧客の会社の中で話が止まっている「顧客の会社の中の根回しを手伝う」
根回しで決まったことが後で覆された「根回しで決まったことを残す」

よくある質問(FAQ)

根回しとはどういう意味ですか?

会議や交渉で物事をうまく運ぶために、正式な場の前に関係者へ個別に話を通し、合意の下地をつくっておくことです。もとは樹木を植え替える1〜2年前に根を切り、細い根を出させる園芸の作業を指す言葉で、そこから「事前に手を打っておく」という意味に転じました(デジタル大辞泉)。

根回しの言い換えは何ですか?

「事前相談」「すり合わせ」「地ならし」「下打ち合わせ」「内諾を取る」「調整」などです。相手に意見を聞きたいなら事前相談、違いをそろえたいならすり合わせ、了承がほしいなら内諾、と何をお願いしたいかで選ぶと伝わります。社外には「地ならし」「下工作」は使わないほうが無難です。

根回しは英語で何と言いますか?

英語でもそのまま nemawashi と書かれることがあり、リーン経営の用語辞典にも載っています。日常の英語なら lay the groundwork(下準備をする)、get buy-in(賛同を得る)、run it by someone(正式に出す前に見てもらう)が近い表現です。

根回しは古い・悪い習慣ですか?

関係者の意見を先に聞き、懸念を反映して案を直すこと自体は、英語圏のリーン経営でも紹介されている合意づくりの手順です。悪いのは、一部の人だけで話を決め、正式な場が追認だけになる場合です。決定は正式な場で行い、理由とともに記録すれば、根回しは健全な準備になります。

根回しとごますりの違いは何ですか?

ごますりは相手に気に入られることが目的で、案の中身は変わりません。根回しは案を通し、決まったあとに根づかせることが目的で、相手の懸念を聞いて案を直します。相手の意見で案が変わる余地があるかどうかが、2つを分ける目安です。

根回しは誰から始めればよいですか?

基本は直属の上司からです。上司より先に他部署や上の役職者に話すと、上司を飛ばしたことになり協力を得にくくなります。上司に「誰に、どの順で話すのがよいか」を相談すると、その相談自体が上司への根回しになり、話を通す順番も確かめられます。

根回しが苦手なときはどうすればよいですか?

話し上手である必要はありません。話を通す相手を書き出し、相手ごとに「あなたの仕事にどう関わるか」と「何をお願いしたいか」を1枚にまとめ、意見を聞いてメモする。この型を守れば、根回しは段取りの作業になります。聞いた意見をどう反映したかを返すと、次からも協力を得やすくなります。

取引先(顧客)の社内の根回しはどう手伝えばよいですか?

先方の担当者に、社内で誰の了承が必要か、いつの会議で決まるか、どんな懸念が出そうかを聞き、決裁者向けの1枚要約や想定問答など、相手ごとの材料を渡します。担当者の頭越しに決裁者へ直接話すのは避け、会う必要があるときは担当者に相談して同席してもらいます。


まとめ

  1. 根回しとは、正式な場の前に関係者へ個別に話を通し、合意の下地をつくること:語源は植木の移植の下準備で、目的は会議を通すことではなく、決まったあとに案を根づかせることです
  2. 言い換えは、相手に何をお願いしたいかで選ぶ:意見を聞くなら事前相談、違いをそろえるならすり合わせ、了承がほしいなら内諾です。英語では nemawashi、lay the groundwork、get buy-in が使えます
  3. 良い根回しと悪い根回しは、「誰に開いているか」と「どこで決まり、記録が残るか」で分かれる:反対しそうな人を外さず、決定は正式な場で行い、理由とともに記録します
  4. やり方は5ステップ:相手を書き出し、順番を決め、中身を1枚に絞り、懸念を聞いて案を直し、正式な場で決めて記録します
  5. 受託・制作・コンサルでは、顧客の社内の根回しを手伝う:担当者の頭越しにせず、相手ごとの材料を渡し、決まったことを顧客と同じ場所に残します

次の会議に案を出す前に、まず「この案で影響を受ける人」を紙に書き出してみてください。そこに反対しそうな人の名前が入っているかが、良い根回しの最初の確認です。

本記事の情報について: 「根回し」の語義と語源は『デジタル大辞泉』『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』『改訂新版 世界大百科事典』の記載(コトバンク)、英語の nemawashi の説明は Lean Enterprise Institute の用語辞典、トヨタの原則は Jeffrey K. Liker『The Toyota Way』の原則13の見出しで、いずれも2026年10月30日に確認しています。例文は Terasu 編集部が作成したひな形で、実在の企業や取引のものではありません。組織ごとの決裁の手順や、誰に話を通すべきかは、社内規程や上司に確認してください。

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