プロジェクト体制図の書き方とテンプレート|役割・決める人・連絡窓口を1枚で示す記入例
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プロジェクト体制図の書き方とテンプレート|役割・決める人・連絡窓口を1枚で示す記入例

著者: Terasu 編集部

プロジェクト体制図(たいせいず)とは、1つのプロジェクトに関わる人を、役割・決める権限・連絡の経路とあわせて1枚の図にしたものである。会社全体の部署を示す組織図とは違い、そのプロジェクトのためだけの体制を示し、受託の案件では自社の体制と顧客側の体制を並べて書くのが一般的である。

体制図は、提案書やキックオフ資料に1枚入れるだけのものだと思われがちです。けれども、案件が止まったときに効いてくるのはこの1枚です。「この仕様は誰が決めるのか」「先方の誰に確認すれば話が進むのか」「作業者に直接頼んでいいのか」が体制図に書いてあれば、迷う時間が減ります。この記事では、体制図に書く項目と書き方の手順を示したうえで、Web制作とシステム開発の記入例を載せました。後半では、体制図の解説では書かれていないことが多い「指示の線の引き方」について、偽装請負と判断されないための考え方を、厚生労働省の基準と疑義応答集、IPAのモデル契約を引いて説明します。

この記事のポイント(TL;DR)

  • 受託の案件の体制図には、自社の体制と顧客側の体制を並べて書きます。顧客側の「決める人」と「日常の窓口」が書かれていない体制図は、案件が止まったときに役に立ちません。
  • 1人ずつ書くのは、役割名・氏名・決めること・連絡の窓口かどうかの4点です。名前と肩書きだけでは、誰に何を聞けばいいかが分かりません。
  • IPAのモデル契約のひな型は、双方の責任者と、日常の連絡を担う主任担当者を選ぶとし、体制図に記載することで相手方への通知に代えられるとしています。体制図は「誰が窓口か」を合意する文書でもあります。
  • 請負・準委任の案件では、発注者が受注者の作業者に直接、作業のやり方を指示すると、偽装請負と判断されるおそれがあります。体制図には、依頼が自社の責任者や窓口を通る線を引きます。
  • パワポなら「挿入」→「SmartArt」→「階層構造」で組織図の形を作れます。体制図は図だけで終わらせず、役割と決めることを書いた表を添えると使えるものになります。

どこから読むか

当てはまる状況先に読むところ
すぐに記入例やテンプレートがほしいプロジェクト体制図のテンプレートと記入例
体制図に何を書けばいいか分からないプロジェクト体制図に書く項目
顧客から作業者に直接連絡が来て困っている指示の線をどう引くか|偽装請負を避ける体制図
パワポで見やすく作りたいパワポ・エクセルで体制図を作るコツ
誰が何を決めるかを細かく決めたい役割分担表(RACI)で体制図を補う
提案書とキックオフで体制図をどう変えるか知りたい提案書・キックオフ・契約で体制図をどう変えるか

プロジェクト体制図とは|組織図・役割分担表との違い

プロジェクト体制図は、1つのプロジェクトに関わる人の役割・権限・連絡の経路を1枚で示す図です。会社の部署の上下関係ではなく、そのプロジェクトの中で誰が何を担い、誰が決め、誰を通して連絡するかを示します。

似たものと混同されやすいので、違いを整理します。

名前示すもの範囲使う場面
プロジェクト体制図プロジェクトの役割・決める人・連絡の経路1つのプロジェクト。受託では自社と顧客の両方提案書、キックオフ資料、契約の別紙
組織図会社の部署と上下関係会社全体会社案内、社内の手続き
役割分担表(RACI)作業や決定ごとに、誰が実行・承認・相談・報告を受けるか作業や決定の単位体制図の補足。責任のあいまいな作業を詰めるとき
連絡先一覧氏名・メールアドレス・電話番号関係者全員日常の連絡

体制図がほかと違うのは、自社と顧客という2つの組織をまたいで書く点です。社内のプロジェクトなら組織図の一部を切り出せば済みますが、受託の案件では、相手の会社の誰が決めるのか、誰が日常の窓口なのかを書かないと、図の半分が空白になります。

商談の段階で、顧客企業の中の誰が導入の判断に影響するかを整理する図は、ステークホルダーマップと呼ばれます。こちらは契約前に相手の意思決定を読み解くための図で、ステークホルダーマップの作り方で解説しています。体制図は、契約後に双方の役割と窓口を合意するための図です。


プロジェクト体制図に書く項目

体制図には、役割名・氏名・決めること・連絡の窓口かどうかの4点を、1人ずつ書きます。名前と肩書きを並べただけの体制図は、見た目は整っていても、誰に何を聞けばいいかが分かりません。

項目書くことなぜ要るか
役割名責任者、窓口(主任担当者)、デザイン、実装など人が交代しても、役割は残る
氏名と所属名前と部署誰に連絡すればいいかが分かる
決めること(権限)仕様の確定、範囲の変更、検収など、その人が決められること判断が止まったとき、誰に上げればいいかが分かる
連絡の窓口かどうか日常の依頼や確認を受ける人かどうか依頼の経路を1本にできる
関わり方常に参加/必要なときだけ/承認のときだけ打ち合わせに誰を呼ぶかを決めやすい
線報告・依頼の経路を矢印や線で示す誰を通して頼むかが一目で分かる
再委託先協力会社がいる場合は、その会社と自社の窓口顧客から見えない作業者が出ないようにする
版と更新日体制を変えたら版と日付を更新する古い体制図で連絡する事故を防ぐ

この中で最も大事なのは「決めること」です。IPAが公開している「情報システム・モデル取引・契約書」第二版のひな型は、第9条で発注者と受注者がそれぞれ責任者を選び、相手に書面で通知するとし、個別の契約で双方の体制図を定めて責任者を記載することで通知に代えることができる、としています。同じ条では、発注者側の責任者の権限として、要件定義書や外部設計書の確定、納入物の検収などを挙げています(IPA「情報システム・モデル取引・契約書」第二版)。

つまり、体制図は「誰が窓口か」「誰が決めるか」を相手と合意する文書でもあります。モデル契約はあくまでひな型ですが、契約書を交わさない小さな案件でも、決める人を名前で書いておくことの価値は同じです。デザインの承認を担当者がしたつもりでも、決める権限が部長にあれば、後から差し戻されます。体制図に「デザインの最終承認: 広報部長 木村様」と書いてあれば、承認を誰にもらえばいいかで迷いません。

兼務と関わり方の書き方

少人数のチームでは、1人が複数の役割を持つのが普通です。ディレクターがデザインも担当する、責任者が窓口を兼ねる、といった場合は、箱を1つにまとめず、役割ごとに箱を分けて同じ名前を書くか、1つの箱に「ディレクター/デザイン」と役割を並べます。役割ごとに分けておくと、後から人を増やしたときに、どの役割を誰に渡すかが分かりやすくなります。

関わり方も書いておくと、打ち合わせに誰を呼ぶかで迷いません。顧客側の責任者は「承認のときと月1回の報告会」、情報システム部は「必要なときだけ」のように書きます。顧客にとっては、自分の部署の誰がどの頻度で時間を取られるのかが事前に分かり、社内で調整しやすくなります。稼働の割合(たとえば「この案件に週2日」)を書く会社もありますが、顧客に見せる体制図では、社内の工数管理の数字は出さず、関わり方の言葉で示す方が誤解を招きません。

同じひな型の第10条は、責任者の下に、連絡確認と必要な調整を行う主任担当者を選ぶとし、相手からの要請や指示の受け取り、相手への依頼、日常の連絡や確認は原則として主任担当者を通じて行うとしています。体制図で「窓口」を1人に決めておくのは、この経路を1本にするためです。


プロジェクト体制図の書き方(5つの手順)

体制図は、役割を先に決めてから人を当てはめ、最後に線を引く順で作ります。人の名前から書き始めると、「この人は何をするのか」があいまいなまま図だけができてしまいます。

  1. 役割を書き出す: 自社側と顧客側それぞれに、責任者・窓口・作業の担当(デザイン、実装、原稿の用意など)・承認する人を書き出します。
  2. 役割ごとに決めることを書く: 仕様の確定、範囲の変更、見積もりの変更、検収など、決める権限がある役割に、何を決められるかを書きます。
  3. 人を当てはめる: 役割に名前を入れます。1人が複数の役割を持つ場合は、その旨を書きます。空欄になった役割は、顧客と確かめる項目にします。
  4. 線を引く: 責任者同士、窓口同士を線で結び、窓口から各担当への線を引きます。顧客から自社の作業者へ直接つながる線は引きません(理由は後の章で説明します)。
  5. 顧客と確かめて版を付ける: キックオフで体制図を見せ、先方の責任者と窓口の名前、決める権限が合っているかを確かめます。合意した版に番号と日付を付けます。

手順3で空欄になった役割は、そのまま放置しないことが大切です。特に顧客側の「決める人」が空欄のまま案件を始めると、最初の承認の場面で止まります。キックオフで確かめる項目の一覧は、キックオフミーティングの進め方にまとめています。

体制は途中で変わります。担当者の異動、協力会社の追加、先方の組織変更があったら、体制図を直して版を上げ、変わった点を一言添えて共有します。モデル契約のひな型も、責任者や主任担当者は事前に書面で相手に通知して変更できるとしています。


プロジェクト体制図のテンプレートと記入例

ここでは、Webサイト制作の案件と、協力会社に一部を再委託するシステム開発の案件を例に、記入例を載せます。どちらも架空の案件の記入例で、実在の企業のものではありません。

記入例(Webサイト制作の案件)

Webサイト制作の案件の体制図の記入例。左が顧客側で、責任者の広報部長 木村様、窓口の広報部 佐藤様、情報システム部が並ぶ。右が自社側で、責任者の制作部長 中村、窓口のディレクター 田中、デザインの山田、実装の鈴木が並ぶ。責任者同士と窓口同士が線で結ばれ、自社の窓口から山田と鈴木へ作業の指示の線が引かれている
図: Webサイト制作の案件の体制図の記入例。責任者同士・窓口同士を結び、作業の指示は自社の窓口から出ます。

図だけでは決めることまで書ききれないので、次のような表を添えます。

側役割氏名決めること窓口関わり方
顧客責任者広報部長 木村様サイト構成・デザインの最終承認、範囲の変更、検収—承認のときと月1回の報告会
顧客窓口(主任担当者)広報部 佐藤様原稿・写真の取りまとめ、日常の確認○週1回の定例
顧客サーバー・メールの担当情報システム部サーバーの用意、メールの設定—必要なときだけ(佐藤様経由で依頼)
自社責任者制作部長 中村見積もりと範囲の変更の判断、体制の変更—月1回の報告会
自社窓口(ディレクター)田中進行と日程、議事録、作業の割り振り○(代理: 中村)週1回の定例
自社デザイン山田デザイン案の作成—田中経由で依頼を受ける
自社実装鈴木ページの組み込み、フォーム、公開作業—田中経由で依頼を受ける

この記入例では、顧客側の責任者(木村様)と窓口(佐藤様)を分けています。日常の確認は佐藤様が受け、構成やデザインの最終承認、範囲の変更、検収は木村様が決めます。承認が必要な場面では、佐藤様に確認した内容を木村様に上げてもらうか、月1回の報告会で木村様に直接判断してもらいます。自社側も同じで、日常の進行は窓口の田中が受け、見積もりや範囲の変更は責任者の中村が判断します。責任者同士・窓口同士の2本の線があることで、日常の話と判断の話を、それぞれ適切な相手に持っていけます。

表で見てほしいのは、顧客側の情報システム部の行です。サーバーの用意は情報システム部の作業ですが、依頼は窓口の佐藤様を通します。制作側から情報システム部に直接連絡すると、佐藤様が状況を把握できなくなり、「聞いていない」が起きます。窓口を通す経路を表に書いておけば、最初から迷いません。

記入例(再委託先がいるシステム開発)

協力会社に一部の開発を再委託する場合は、協力会社も体制図に書きます。顧客から見えない作業者がいる状態は、品質と情報管理の両面で顧客の不安につながるからです。

側役割氏名決めること窓口
顧客責任者業務部長要件定義書・外部設計書の確定、検収—
顧客窓口(主任担当者)情報システム部 担当者質問への回答の取りまとめ、検証環境の手配○
顧客業務の担当業務部 担当者業務の説明、受け入れテスト—
自社責任者開発部長範囲・見積もりの変更、再委託先の選定—
自社窓口(PM)PM 小林進行と日程、課題の管理、協力会社への作業の割り振り○
自社開発高橋・伊藤設計と開発—
協力会社協力会社の責任者協力会社の管理責任者協力会社の作業者への指示自社PMとの窓口
協力会社開発協力会社の作業者担当機能の開発—

再委託先がいる場合も、線の引き方の考え方は同じです。顧客は自社の窓口へ、自社は協力会社の管理責任者へ依頼し、協力会社の作業者への指示はその会社の管理責任者が出します。

記入例(少人数の制作会社の案件)

3人ほどの制作会社では、責任者が窓口を兼ね、デザインと実装を1人ずつが担当する、という体制がよくあります。その場合も、顧客側の「決める人」と「窓口」は分けて書きます。

側役割氏名決めること窓口
顧客責任者(代表)代表デザインの最終承認、範囲の変更、検収—
顧客窓口総務の担当者原稿の取りまとめ、日常の確認○
自社責任者/窓口代表 兼 ディレクター範囲と見積もりの変更、進行、作業の割り振り○(代理: デザイン担当)
自社デザインデザイン担当デザイン案の作成—
自社実装実装担当ページの組み込み、公開作業—

自社の責任者が窓口を兼ねる場合は、不在のときの代理を書いておきます。代理がいないと、責任者が別の打ち合わせに出ている間、顧客の連絡がデザインや実装の担当者に直接届くようになり、作業の割り振りを自社で決められなくなります。代理をデザイン担当のように作業も持つ人にする場合は、不在の間に作業の割り振りと顧客の依頼の受け付けを決める権限を、その人に渡しておきます。

パワポのテンプレートをダウンロードする

上のWebサイト制作の記入例を、パワポ(PowerPoint)のファイルにしました。Googleスライドにも読み込めます。

プロジェクト体制図テンプレート(PowerPoint形式・.pptx)をダウンロードする

ファイルは4枚のスライドです。

  • 1枚目: 体制図の記入例。顧客側と自社側を左右に分け、責任者同士・窓口同士を線で結び、作業の指示は自社の窓口から出る形にしています。
  • 2枚目: 役割の表の記入例(役割・氏名・決めること・窓口・関わり方)。
  • 3枚目と4枚目: 同じ形の空のテンプレート。箱と表に、自社と顧客の名前を書き込んで使えます。

箱や線は図形で作ってあるので、人数が違う場合は箱をコピーして増やし、線をつなぎ直してください。

コピーして使う項目表

側役割氏名決めること窓口関わり方
顧客責任者—
顧客窓口(主任担当者)○
自社責任者—
自社窓口○
自社—

顧客側の欄が埋まらない場合は、それ自体がキックオフで確かめることです。「デザインの最終承認はどなたがされますか」「日常のご連絡はどなたにお送りすればよいですか」と聞けば、多くの場合その場で決まります。

体制図と議事録を、顧客と同じ場所に置く

Terasuは、顧客と進める案件の共有ワークスペースです。依頼と期限、先方の確認状況を顧客と同じ場所で確かめられ、決まったことを記録した議事録や資料も同じ場所に置けます。体制図や議事録の最新版も、案件ごとに同じ場所にまとまります。まずは1つの案件から無料でお試しください。

無料で案件の共有スペースを作る

指示の線をどう引くか|偽装請負を避ける体制図

請負や準委任の案件の体制図では、顧客からの依頼が自社の責任者や窓口を通り、自社の作業者への作業の指示は自社から出る線を引きます。顧客が自社の作業者に直接、作業のやり方を指示する体制は、偽装請負と判断されるおそれがあるからです。

請負・準委任で問題になる「指示」とは

厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号、最終改正 平成24年厚生労働省告示第518号)は、請負の形で仕事をする事業主が、労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと、労働者の配置等の決定と変更を自ら行うことなどを、請負と認められる条件として挙げています(厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」)。

この基準は請負だけの話ではありません。同じ基準の疑義応答集(第3集)は、委任・準委任も同様で、アジャイル型開発が準委任契約で行われる場合でも、実態として発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係がある場合には、契約の形式を問わず労働者派遣事業に該当すると説明しています。判断は契約の形式ではなく、基準に基づき実態に即して行われます(厚生労働省「37号告示に関する疑義応答集(第3集)」)。

IPAのモデル契約のひな型も、第11条で、受注者が業務に従事する自社の従業員に対し、業務遂行に関する指示や労務管理などの一切の指揮命令を行うとしています(IPA「情報システム・モデル取引・契約書」第二版)。体制図に引く線は、この関係を目に見える形にしたものです。

体制図に引く指示の線を比べた図。左は体制図に引く線で、顧客の窓口から自社の窓口へ依頼・要望が届き、自社の窓口から作業者へ作業の指示が出る。右は避ける線で、顧客から自社の作業者へ直接、作業のやり方や順番を指示している
図: 体制図に引く線と、避ける線。依頼や要望は自社の窓口に届け、作業の指示は自社から出します。

打ち合わせやメールで気をつけること

顧客と作業者が同じ打ち合わせに出ることや、メールの宛先に作業者が入ること自体が、すぐに問題になるわけではありません。疑義応答集(第2集)は、発注者との打ち合わせに、管理責任者の判断で請負労働者が同席しても、それのみをもって直ちに労働者派遣事業と判断されることはないとしています。一方で、打ち合わせの際に作業の順序や従業員への割り振りなどの詳細な指示が行われたり、作業方針の変更が日常的に指示されたりして、請負事業主が自ら業務の遂行方法を指示していると認められない場合は、労働者派遣事業と判断されるとしています。依頼メールを管理責任者の了解の下で作業者にも cc で送る場合も同じ考え方で、発注者から作業者に直接返信を求めるような場合などは、同様に判断されるとしています(厚生労働省「37号告示に関する疑義応答集(第2集)」)。

体制図と運用でできることは、次のとおりです。

  • 依頼の窓口を体制図に書く: 顧客からの依頼や要望は、自社の窓口(ディレクターやPM)が受けると明記します。
  • 作業の割り振りは自社が決める: 顧客が「この作業をAさんにやってほしい」と言ってきても、誰が担当するかは自社の責任者や窓口が決めます。
  • 打ち合わせの場で作業のやり方を決めない: 打ち合わせで話すのは、何を作るか・いつまでに・どの水準で、です。どう作業するか、誰がどの順番でやるかは、持ち帰って自社で決めます。
  • 役割と進め方を最初に合意する: 疑義応答集(第3集)は、アジャイル型開発で偽装請負とならないよう、双方の関係者の役割や権限、チーム内の業務の進め方などを予め明確にし、発注者と受注者の間で合意しておくことが重要だとしています。同じ第3集のQ8は、この考え方がアジャイル型開発以外のシステム開発を請負業務とする場合にも当てはまるとしています。体制図と役割の表は、その合意の土台になります。

顧客から作業者に直接連絡が来たときの対応

体制図で窓口を決めていても、顧客から作業者へ直接「ここを今日中に直してほしい」と連絡が来ることはあります。作業者がその場で対応してしまうと、窓口が知らない作業が増え、日程や範囲の管理が崩れます。

作業者には、次のように返してもらう決まりにしておきます。

  • 受け取ったことだけを返す: 「ご連絡ありがとうございます。担当の田中から対応の予定をご連絡します」と返し、作業の約束はしない。
  • 窓口に転送する: 受け取った内容をそのまま自社の窓口に渡し、窓口が対応の要否と順番を決める。
  • 窓口から顧客に返答する: 対応する場合は、いつまでに誰が対応するかを窓口から顧客に伝える。範囲外なら、その旨もここで伝える。

これを繰り返すうちに、顧客も窓口へ連絡する方が早いと分かるようになります。キックオフで体制図を見せるときに、「ご依頼は田中までお願いします。田中が不在のときは代理の中村へ」と口頭でも伝えておくと効果的です。

窓口の代理と兼任も体制図に書く

自社の窓口や責任者が休みの日に、顧客が作業者へ直接連絡してしまう、ということはよく起きます。最初に公表された疑義応答集(第2集・第3集の前のもの)は、請負事業主の管理責任者が休暇などで不在になることがある場合には、代理の者を選んで権限を行使できるようにしておけば、特に問題はないとしています。一方で、管理責任者が作業者を兼任していて、作業の都合で事実上作業者の管理ができないなら管理責任者とはいえず、作業場に作業者が1人しかおらずその人が管理責任者を兼ねている場合は、発注者から管理責任者への注文が実態として作業者への指揮命令になるため、偽装請負と判断されるとしています(厚生労働省「37号告示に関する疑義応答集」)。

体制図では、窓口の箱に「代理: ○○」と書き添えます。代理には、作業の割り振りを決める権限を持つ人(Web制作の記入例では責任者の中村)を置きます。顧客は窓口が不在のときに誰へ連絡すればいいかが分かり、作業者に直接連絡する理由がなくなります。

ただし、顧客先に1人で常駐し、その人が管理責任者も兼ねる形は、体制図にどう書いても偽装請負と判断されます。上の疑義応答集が、作業者が1人だけでその人が管理責任者を兼ねる場合は、発注者から管理責任者への注文が実態として作業者への指揮命令になるとしているためです。このような案件では、体制図を描く前に、自社の側に作業者とは別の管理責任者(または権限を持つ代理)を置けるかを確かめ、その人を窓口として体制図に示します。置けない場合は、契約の形そのものを見直す必要があります。

個別の案件が偽装請負にあたるかどうかは、実態に即して判断されます。判断に迷う場合は、都道府県労働局や専門家に相談してください。厚生労働省の派遣と請負の区分に関するQ&Aのページにも、疑義応答集に載っていない事例は各都道府県労働局が個別に判断するとの案内があります。


提案書・キックオフ・契約で体制図をどう変えるか

体制図は、案件の段階によって書ける中身が変わります。同じ1枚を使い回すのではなく、段階ごとに目的に合わせて書き分けると、それぞれの場面で役に立ちます。

段階体制図の目的自社側に書くこと顧客側に書くこと
提案書任せて大丈夫かを判断してもらう責任者と窓口の名前、各担当の役割と経験、協力会社の有無役割名だけ(「ご担当者様」「ご承認者様」)。想定する関わり方を書く
キックオフ資料誰が決め、誰を通して連絡するかを合意する全員の名前、決めること、窓口と代理責任者と窓口の名前、決めること。空欄はその場で確かめる
契約の別紙責任者と窓口を正式に通知する責任者と主任担当者(窓口)責任者と主任担当者(窓口)
進行中体制の変更を共有する交代・追加した人と日付異動・組織変更があった人と日付

提案書の体制図では、顧客側を役割名だけで書き、「デザインのご承認はどなたがされるか、キックオフで確認させてください」と添えておくと、キックオフの議題に自然につながります。提案の段階で顧客の社内の判断の流れを読み解く方法は、稟議を通すための営業の支援でも扱っています。

キックオフで合意した体制図は、契約の別紙や議事録に添えて残します。モデル契約のひな型が、体制図に責任者や主任担当者を記載することで通知に代えられるとしているのは、体制図が「誰が窓口で、誰が決めるか」の合意の記録になるからです。


役割分担表(RACI)で体制図を補う

体制図で「誰が決めるか」を大まかに示したら、責任があいまいになりやすい作業や決定だけを、役割分担表で詰めます。役割分担表の型としてよく使われるのがRACI(レイシー)で、作業や決定ごとに次の4つの役割を割り当てます。

  • R(Responsible)実行する人: 実際に作業をする人
  • A(Accountable)最終的に責任を持つ人: 承認し、結果に責任を持つ人。1つの作業に1人だけにする
  • C(Consulted)相談を受ける人: 決める前に意見を聞く人
  • I(Informed)報告を受ける人: 決まった後に知らせる人

Webサイト制作の記入例で、決定の場面だけを表にすると次のようになります。

作業・決定木村様(先方 責任者)佐藤様(先方 窓口)中村(自社 責任者)田中(自社 窓口)山田(デザイン)
サイト構成案の承認ACIRI
デザインの承認ACIRC
原稿・写真の取りまとめIA・R—C—
範囲の変更ACARI
検収ARIC—

「範囲の変更」で A が2人いるのは、顧客と自社の両方の承認が要るからです。A は1作業に1人が原則ですが、受託の案件では、範囲や費用の変更のように双方の合意が必要な決定があります。その場合は、どちらの A も欠けると決まらないことを表に書いておきます。

役割分担表を作るときは、まず行に「決定」を並べ、列に体制図の役割を並べます。次に、各行で A を1人(双方の合意が要る決定は各社1人)決め、R、C、I の順に埋めます。最後に、A が空欄の行、R が誰もいない行、C が多すぎる行がないかを確かめます。C が多い決定は、意見を聞く相手が多すぎて決まるまでに時間がかかるので、本当に事前に相談が必要な人だけに絞ります。

役割分担表は、すべての作業について作る必要はありません。体制図だけでは誰が決めるか分からない決定、過去に揉めた決定だけに絞ると、更新の手間をかけずに済みます。決まったことの残し方は、「言った言わない」をなくす方法、決まっていないことを誰が判断するかを追う表は、課題管理表の作り方とテンプレートで解説しています。


パワポ・エクセルで体制図を作るコツ

体制図は、パワポ(PowerPoint)でもエクセルでも作れます。提案書やキックオフ資料に入れることが多いので、パワポで作るのが一般的です。

パワポでは、SmartArtの組織図を使うと、箱と線を手で並べなくても階層の形ができます。Microsoftのサポートページでは、「挿入」タブの「図」で「SmartArt」をクリックし、「階層構造」から組織図のレイアウトを選ぶ手順が案内されています。組織図のレイアウトでは「アシスタントの追加」で、同じ階層の箱の上に補佐役の箱を足すこともできます(Microsoft サポート「Office で SmartArt を使用して組織図を作成する」)。

ただし、SmartArtの組織図は1つの組織の上下関係を描く形なので、自社と顧客を並べる体制図では、組織図を2つ並べ、責任者同士・窓口同士を線でつなぐ形にすると見やすくなります。作るときのコツは次のとおりです。

  • 左右で自社と顧客を分ける: 顧客を左、自社を右など、どちらがどちらかを固定し、見出しを付けます。
  • 箱には役割名を大きく、氏名を小さく書く: 人が交代しても、図の骨格は変わりません。
  • 窓口の箱だけ色を変える: 誰に連絡すればいいかが一目で分かります。
  • 線の種類を分ける: 責任者同士・窓口同士の線と、社内の作業の指示の線を、線の太さや色で区別します。
  • 決めることは図ではなく表に書く: 箱の中に権限を詰め込むと読めなくなります。図の次のページに役割の表を置きます。

配置にも型があります。上に責任者、その下に窓口、さらにその下に作業の担当を置く縦の配置は、誰が誰に報告するかが分かりやすく、提案書向きです。窓口を中央に置き、その周りに担当や関係部署を並べる配置は、日常の連絡が誰に集まるかを強調でき、キックオフ資料や社内の共有向きです。どちらの配置でも、顧客側と自社側の窓口の箱が、図の中で向かい合う位置に来るようにすると、連絡の経路が一目で分かります。

エクセルで作る場合は、図形で箱を作るより、前の章の役割の表をそのまま体制図として使う方が更新しやすいこともあります。図はパワポで作り、表はエクセルやスプレッドシートで管理して、体制が変わったら表を直してから図を直す、という分け方もあります。


体制図が役に立たない原因と対策

体制図を作ったのに、案件が止まったときに誰も見ない場合、原因はたいてい次のどれかです。

原因起きていること対策
自社の体制しか書いていない先方の誰が決めるか分からず、承認の場面で止まる顧客側の責任者と窓口を書き、キックオフで確かめる
名前と肩書きだけ誰に何を聞けばいいか分からない役割ごとの決めることを表で添える
窓口が決まっていない依頼が複数の経路で届き、行き違いが起きる双方の窓口を1人ずつ決め、体制図に明記する
顧客から作業者へ直接の線がある作業の指示が自社を通らず、管理も契約上の扱いもあいまいになる依頼は窓口へ、作業の指示は自社から出す線に引き直す
更新されない異動した人に連絡してしまう体制を変えたら版と日付を更新し、変更点を共有する
置き場所がばらばら提案書の版、キックオフ資料の版が混在する最新版を1つの場所に置き、リンクで共有する

体制図の置き場所が提案書とキックオフ資料とメールの添付に分かれると、どれが最新かで迷います。顧客と共有する資料の置き場所を1つにまとめる考え方は、顧客向けの進捗報告の書き方でも扱っています。受託の案件全体の進め方は、クライアントワークとはを参考にしてください。

窓口や決める人があいまいな進め方になっていないかを、12問で点検する

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よくある質問(FAQ)

プロジェクト体制図とは何ですか?

1つのプロジェクトに関わる人を、役割・決める権限・連絡の経路とあわせて1枚にした図です。会社全体の部署を示す組織図と違い、そのプロジェクトのための体制を示し、受託では自社と顧客の両方を書きます。

体制図と組織図の違いは?

組織図は会社全体の部署と上下関係を示し、体制図は1つのプロジェクトの役割・決める人・連絡の経路を示します。体制図は、自社と顧客という2つの組織をまたいで書く点が大きな違いです。

プロジェクト体制図には何を書けばいいですか?

役割名・氏名と所属・決めること(権限)・連絡の窓口かどうかの4点を1人ずつ書き、報告や依頼の経路を線で示します。再委託先がいる場合は協力会社も書き、版と更新日を入れます。

体制図に顧客側の体制も書くべきですか?

書くべきです。顧客側の責任者(決める人)と日常の窓口が分からないと、承認や確認の場面で案件が止まります。分からない欄は、キックオフで顧客に確かめる項目にします。

体制図はパワポで作れますか?

作れます。「挿入」タブの「SmartArt」から「階層構造」の組織図レイアウトを選ぶと、階層の形ができます。自社と顧客を並べる場合は組織図を2つ並べ、責任者同士・窓口同士を線でつなぎます。

顧客が作業者に直接指示するのは問題ですか?

請負や準委任では、発注者が受注者の作業者に作業のやり方を直接指示すると、偽装請負と判断されるおそれがあります。依頼は自社の窓口が受け、作業の指示は自社から出す体制にします。

体制図はいつ作ればいいですか?

提案書の段階で自社側を中心に作り、キックオフで顧客側の責任者と窓口の名前を確かめて完成させます。契約の別紙や議事録に添えて残し、体制が変わるたびに版と日付を更新します。

体制図にメールアドレスや電話番号も書くべきですか?

体制図には役割・氏名・決めること・窓口を書き、連絡先は別の連絡先一覧にまとめる方が扱いやすくなります。体制図は提案書や資料に載せて広く配ることが多く、個人の連絡先まで載せると配布先の管理が難しくなるためです。

RACIとは何ですか?

作業や決定ごとに、実行する人(R)、最終的に責任を持つ人(A)、相談を受ける人(C)、報告を受ける人(I)を割り当てる役割分担表です。体制図だけでは誰が決めるか分からない決定を詰めるときに使います。


まとめ

  1. 体制図はプロジェクトの役割・決める人・連絡の経路を示す図:会社の組織図とは別物です
  2. 自社と顧客の両方を書く:顧客側の責任者と窓口が空欄の体制図は、承認の場面で役に立ちません
  3. 1人ずつ4点を書く:役割名・氏名・決めること・窓口かどうか。決めることは図に添える表に書きます
  4. 窓口を1本にする:モデル契約のひな型も、日常の連絡は主任担当者を通じて行う形をとっています
  5. 作業の指示は自社から出す線を引く:顧客から作業者へ直接の線は、偽装請負と判断されるおそれがあります
  6. 体制が変わったら版を上げる:最新版を1つの場所に置き、変わった点を共有します

まずは今の体制図に、顧客側の「決める人」と「窓口」の名前が書かれているかを確かめてください。書かれていなければ、次の定例で聞くところから始めましょう。体制が決まったら、作業の洗い出しはWBSの作り方とテンプレートで進められます。

本記事の情報について: モデル契約の内容はIPA「情報システム・モデル取引・契約書」第二版のひな型、請負と派遣の区分は厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」と同基準の疑義応答集(第2集・第3集)、SmartArt の操作は Microsoft サポートで、2026年10月8日に確認しています。本記事は一般的な考え方の解説で、個別の案件の法的な判断を示すものではありません。記入例は Terasu 編集部が作成したひな形で、実在の企業や案件のものではありません。

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