
準委任契約とは?請負との違いと成果完成型・履行割合型|受託案件での選び方
準委任契約(じゅんいにんけいやく)とは、法律行為ではない事務の処理を相手に任せる契約である。民法656条が、委任の規定をそのまま準用すると定めている。請負が「仕事の完成」を約束するのに対し、準委任は「事務を適切に処理すること」を約束し、完成の義務を負わない。報酬の決め方には、した作業の割合で払う「履行割合型」と、成果に対して払う「成果完成型」がある(民法648条・648条の2、2020年4月1日施行の改正で整理)。
この記事のポイント(TL;DR)
- 準委任は、Webサイトの運用、コンサルティング、開発の支援、記事の制作代行のように、「専門家として作業を進めること」自体を頼む契約です。受ける側は、善良な管理者の注意(善管注意義務)をもって事務を処理する義務を負います(民法644条)。
- 請負との一番の違いは、完成の義務があるかどうかです。請負は、仕事を完成させ、その結果に対して報酬を受け取ります(民法632条)。準委任は完成を約束しないので、成果が想定どおりでなくても、適切に作業をしていれば報酬を請求できるのが原則です。
- 準委任には、作業の量や期間に応じて報酬を払う「履行割合型」と、報告書などの成果に報酬を結びつける「成果完成型」があります。成果完成型でも、完成の義務を負うわけではありません。
- 受託・制作の案件では、「契約の時点で、何を渡せば完了かを言えるか」で請負か準委任かを決めると迷いが減ります。要件が決まりきらない仕事を請負で受けると、変更のたびに完成の定義が動き、完成の責任だけが受注側に残ります。
- 準委任でも請負でも、顧客が受注側の担当者に作業のやり方や時間を直接指示している実態があると、契約の名前にかかわらず労働者派遣と同じ扱いになり、偽装請負として労働者派遣法違反と判断されます(厚生労働省 37号告示の疑義応答集)。
- 個人や一人社長に仕事を出す場合は、2024年11月1日施行のフリーランス法が、準委任の取引にもかかります。取引条件の明示、受け取った日から60日以内の支払期日、6か月以上続く契約を切るときの30日前の予告などが求められます。
どこから読むか
| 当てはまる状況 | 先に読むところ |
|---|---|
| 言葉の意味と、委任・業務委託との関係を知りたい | 準委任契約とは|意味と読み方 |
| 請負との違いを表で確かめたい | 請負・準委任・派遣の違い |
| 成果完成型と履行割合型の違いが分からない | 準委任の2つの型 |
| これから見積もる案件を、どちらの契約で受けるか決めたい | どちらで受けるかの判定 |
| 検収、追加の依頼、途中解約で揉めそう | 契約の型で変わる実務 |
| 顧客の会社に常駐して作業する | 偽装請負にならないための線引き |
| 契約書や作業範囲の書類を作る | 契約書に書くことのチェックリスト |
準委任契約とは|意味と読み方
準委任契約とは、法律行為ではない事務を相手に任せ、相手がそれを引き受ける契約で、読み方は「じゅんいにんけいやく」です。民法には「準委任契約」という名前の詳しい規定はなく、656条が「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する」と定めて、委任の規定をそのまま使います(e-Gov法令検索 民法)。
「準用する」とは、似た場面に同じルールを当てはめる、という意味です。そのため、準委任のルールを知りたいときは、民法643条から始まる「委任」の節を読むことになります。
委任と準委任の違い|法律行為かどうか
委任と準委任の違いは、任せる事務が法律行為かどうかだけです。民法643条は、委任を「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」契約と定めています。
法律行為とは、契約を結ぶ、訴訟を起こす、登記を申請するといった、法律上の効果を生む行為です。弁護士に訴訟の代理を頼むのは委任、税理士に記帳を頼む、制作会社にサイトの運用を頼む、コンサルタントに業務の改善を頼むのは、法律行為ではない事務なので準委任です。受託・制作・コンサルの仕事の多くは、準委任にあたります。
業務委託契約・SESとの関係
「業務委託契約」は、民法に定められた契約の名前ではありません。外部に仕事を頼む契約をまとめて呼ぶ実務上の言葉で、中身によって請負、委任、準委任のどれか(または組み合わせ)にあたります。契約書の表題が「業務委託契約書」でも、何を約束しているかで、どの規定が当てはまるかが決まります。
SES(システムエンジニアリングサービス)は、技術者の作業時間に対して報酬を払う形が多く、契約の型としては準委任で結ぶのが一般的です。ただし、後で説明するとおり、準委任で結んでも、顧客が技術者に直接作業の指示を出すことはできません。
受託・制作・コンサルの仕事の全体像や、業務委託・SESを含む言葉の関係は、クライアントワークとはで整理しています。
請負・準委任・派遣の違い|比較表
請負・準委任・派遣の違いは、報酬が何に結びつくか、完成の義務があるか、作業の指示を誰が出すかの3点で整理できます。民法の条文と、厚生労働省の基準をもとに並べると次のとおりです。
| 観点 | 請負 | 準委任 | 労働者派遣 |
|---|---|---|---|
| 根拠 | 民法632条 | 民法656条(委任の規定を準用) | 労働者派遣法 |
| 約束すること | 仕事を完成させる | 事務を適切に処理する | 雇用する人を派遣先の指示のもとで働かせる |
| 完成の義務 | あり | なし | なし |
| 報酬の支払時期(原則) | 目的物の引渡しと同時(633条) | 事務を履行した後(648条2項)。期間で決めたら期間の経過後 | 派遣契約による |
| 作業の指示を出す人 | 受注者 | 受任者(受注側) | 派遣先(顧客) |
| 負う責任 | 契約の内容に適合しない場合の責任(契約不適合責任) | 善管注意義務(644条)。違反すれば債務不履行 | 派遣元・派遣先がそれぞれ法の義務を負う |
| 途中でやめる | 完成前なら注文者はいつでも、損害を賠償して解除できる(641条) | 双方がいつでも解除できる。不利な時期などは損害賠償(651条) | 派遣契約と法の定めによる |
| 紙の契約書の印紙(概要) | 第2号文書(請負に関する契約書) | 委任契約書は原則として課税文書に当たらない | 本記事では扱わない |
表の内容を、報酬が何に結びつくかの順に左から右へ並べ直すと、次の図のようになります。左に行くほど仕事の完成に、右に行くほど作業や就業そのものに報酬が結びつきます。
請負|完成させて、結果に対して報酬を受け取る
請負は、仕事の完成を約束し、その結果に対して報酬を受け取る契約です。民法632条は、請負を「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と定めています。報酬は、原則として目的物の引渡しと同時に支払われます(633条)。
完成させたものが、種類や品質の点で契約の内容に合っていない場合、受注者は直す、代金を減らす、損害を賠償するといった責任を負います。売買の規定(562条など)が、559条によって請負のような有償契約にも準用されるためです。注文者がこの責任を問うには、不適合を知った時から1年以内に受注者へ通知する必要があります(637条)。
準委任|専門家として適切に作業を進める
準委任は、結果ではなく、事務の処理そのものを約束する契約です。受任者は「委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務」を負います(644条)。善管注意義務とは、その仕事を引き受けた専門家に通常求められる水準の注意を払う義務のことです。
完成の義務がないので、例えば広告運用を準委任で受け、想定した成果が出なかったとしても、それだけで報酬がなくなるわけではありません。一方で、専門家として当然すべき確認を怠った場合は、善管注意義務に反したとして、債務不履行による損害賠償(415条)を求められることがあります。
準委任の受任者には、報告の義務もあります。委任者から求められたときはいつでも作業の状況を報告し、委任が終わった後は遅滞なく経過と結果を報告しなければなりません(645条)。作業に必要な費用を立て替えた場合は、その費用と利息を委任者に請求できます(650条)。
労働者派遣|指示を出すのは顧客
労働者派遣は、派遣元が雇用する人を、派遣先(顧客)の指揮命令のもとで働かせる仕組みです。請負や準委任との決定的な違いは、顧客が作業する人に直接指示を出せる点にあります。厚生労働省の疑義応答集は、請負と労働者派遣の違いは、請負では発注者と受注者側の労働者の間に指揮命令の関係が生じない点にあり、委任・準委任も同様だと説明しています(厚生労働省 37号告示に関する疑義応答集(第3集))。
準委任の2つの型|履行割合型と成果完成型
準委任の報酬の決め方には、作業の量や期間に応じて払う「履行割合型」と、作業で得られる成果に対して払う「成果完成型」の2つがあります。2020年4月1日に施行された民法(債権関係)の改正で、成果に対して報酬を払う場合の規定(648条の2)が加わり、2つの型が条文の上で区別されるようになりました(法務省 民法の一部を改正する法律(債権法改正)について)。
| 観点 | 履行割合型 | 成果完成型 |
|---|---|---|
| 報酬が結びつくもの | 作業をした量や期間 | 作業で得られる成果(報告書、記事、分析結果など) |
| 報酬を請求できる時期 | 事務を履行した後。期間で決めたら期間の経過後(648条2項) | 成果の引渡しが要るなら、引渡しと同時(648条の2第1項) |
| 途中で終わったとき | すでにした履行の割合に応じて請求できる(648条3項) | 可分な部分の成果で委任者が利益を受けるなら、その割合に応じて請求できる(648条の2第2項で634条を準用) |
| 完成の義務 | なし | なし |
| 受託・制作での例 | 月額の運用支援、技術顧問、時間単価の開発支援 | 調査報告書の作成、月10本の記事の制作代行、改善提案書の作成 |
履行割合型|した作業の分だけ報酬を受け取る
履行割合型は、作業をした量や期間に応じて報酬を払う型で、準委任の基本の形です。民法648条2項は、報酬を受けるべき場合でも、委任事務を履行した後でなければ請求できないとし、期間で報酬を定めたときは期間の経過後に請求できる、と定めています。「月額30万円で運用を支援する」「1時間あたりの単価で開発を手伝う」といった契約がこの型です。
注意したいのは、648条1項が「受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない」と定めている点です。準委任は、もともと報酬のない契約が原則という建て付けなので、報酬を受け取るなら、契約書に報酬の額と支払時期を必ず書きます。
成果完成型|成果に報酬を結びつける
成果完成型は、作業で得られる成果に対して報酬を払う型です。民法648条の2第1項は、委任事務の履行によって得られる成果に対して報酬を払う約束をした場合に、その成果の引渡しが要るときは、報酬は成果の引渡しと同時に払わなければならない、と定めています。
成果完成型と請負は似て見えますが、成果完成型でも、受任者は完成の義務を負いません。約束しているのはあくまで事務を適切に処理することで、成果が出なければ報酬が発生しない、という報酬の条件が付いているだけです。完成させること自体を約束するなら、契約の名前が準委任でも、中身は請負として扱われる可能性があります。
途中で終わったときの報酬
途中で終わったときの扱いも、型によって違います。履行割合型では、委任者の責任ではない理由で作業を続けられなくなったときや、委任が途中で終わったときに、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求できます(648条3項)。
成果完成型では、648条の2第2項が請負の634条を準用します。すでにした作業の結果のうち、分けられる部分があり、それによって委任者が利益を受けるなら、その部分を完成とみなし、利益の割合に応じて報酬を請求できます。例えば「記事10本で月額」の契約が6本の時点で終わり、6本を委任者が使えるなら、その分の報酬を求める根拠になります。どこまでを「分けられる部分」とするかで揉めないよう、成果の単位と単価を契約書に書いておくのが確実です。
受託・制作の案件で、請負と準委任のどちらで受けるか
受託・制作の案件で請負と準委任のどちらで受けるかは、「契約の時点で、何を渡せば完了かを言えるか」で決めると迷いが減ります。完了の形を言えるなら請負、言えないなら準委任が候補です。その前に、顧客が作業の指示を直接出す働き方になっていないかを確かめます。順に答えると、次の図のように候補が決まります。
判定に使う問いと、答え方の目安
図の3つの問いは、次のように答えます。
- 顧客が受注側の担当者に、作業のやり方や時間を直接指示するか:顧客の担当者が、受注側の担当者に「この順番でやって」「今日は19時まで残って」と直接言う働き方なら、請負でも準委任でも受けられません。受注側の責任者を決め、要望はその人が受け取る形に直します(詳しくは偽装請負にならないための線引き)。
- 契約の時点で、何を渡せば完了かを言えるか:ページ数・画面・機能・納品物の形式が決まっていて、「これを渡して検収されたら終わり」と書けるなら請負が向いています。顧客の判断待ちで中身が決まる、作りながら決める、という仕事なら準委任が向いています。
- 報酬を、報告書や成果物などの引渡しに結びつけるか:結びつけるなら成果完成型、作業の期間や時間で払うなら履行割合型です。
仕事の種類ごとの目安
仕事の種類ごとに、向いている型の目安をまとめると次のとおりです。あくまで目安で、同じ種類の仕事でも、契約の時点で何が決まっているかで変わります。
| 仕事の例 | 向いている型の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| ページ構成と原稿が決まったWebサイトの制作 | 請負 | 何を渡せば完了かを契約の時点で書ける |
| 要件がまだ決まっていない新規サービスの企画 | 準委任(履行割合型) | 完了の形は作業しながら決まる |
| アジャイル型の開発(短い期間で作って直すを繰り返す) | 準委任(履行割合型) | 開発の途中で要件の追加や変更がある前提 |
| 月額のWebサイト運用・改善 | 準委任(履行割合型) | 続く作業に報酬を払う |
| 調査や分析の報告書の作成 | 準委任(成果完成型)または請負 | 報告書の引渡しに報酬を結びつける。中身の完成まで約束するなら請負 |
| 月○本の記事の制作代行 | 準委任(成果完成型)または請負 | 本数に報酬を結びつけやすい |
| 公開後のシステムの保守 | 準委任(履行割合型) | 問い合わせ対応や監視など、続く作業が中心 |
アジャイル型の開発について、IPA(情報処理推進機構)が2020年3月31日に公開したモデル契約(アジャイル開発版)は、「あらかじめ特定した成果物の完成に対して対価を支払う請負契約ではなく、ベンダ企業が専門家として業務を遂行すること自体に対価を支払う準委任契約を前提として」いると説明しています(IPA 情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版))。
迷う案件は、工程を分けて契約する
1つの案件の中に、完了の形を言える工程と言えない工程が混ざっている場合は、工程を分けて別々に契約する方法があります。例えば、要件を整理する工程は準委任で受け、要件が決まった後の制作は請負で受ける、という分け方です。
要件が決まりきらないまま全体を請負で受けると、顧客の判断が変わるたびに完成の定義が動きます。それでも完成の責任だけは受注側に残るので、追加の作業が「完成のために必要な作業」として扱われ、無償で抱え込むことになりがちです。工程を分ければ、要件の整理にかかった時間は準委任の報酬として受け取り、制作は決まった要件で見積もれます。
例: コーポレートサイトのリニューアルを分けて受ける
架空の例で考えます。従業員50人ほどの会社から、コーポレートサイトのリニューアルを頼まれたとします。最初の打ち合わせでは、「採用ページを強くしたい」「事業の説明が古い」という要望はあるものの、ページ数も、誰が原稿を書くかも決まっていません。
この状態で全体を請負で見積もると、ページ数や原稿の量を仮に置くしかありません。後から「採用ページに社員インタビューを5本入れたい」と言われたとき、それが仮置きの範囲に入るのかで揉めます。
そこで、最初の工程を準委任で受けます。例えば「サイト構成と原稿の方針を決めるまでの4週間、週1回の打ち合わせと構成案の作成を、月額で受ける」と決め、報酬は履行割合型にします。4週間で、ページの一覧、原稿を誰が書くか、写真を撮るかが決まったら、それを別紙にして、制作の工程を請負で見積もります。制作の見積もりは決まったページの一覧に対して出すので、「何を渡せば完了か」を契約の時点で書けます。
公開後の更新や改善を続けて頼まれるなら、それはまた準委任(月額の運用)として別に契約します。1つの案件でも、工程ごとに完了の形が言えるかどうかで、型を選び直すのがこの分け方の考え方です。
作業時間の見積もり方と、人日・人月で顧客と合意する方法は、工数とはで扱っています。
契約の型で変わる実務|検収・追加依頼・途中解約・責任
請負か準委任かで、検収の意味、追加の依頼の扱い、途中解約の条件、受注側が負う責任が変わります。揉めやすい4つの場面を並べると次のとおりです。
| 場面 | 請負 | 準委任 |
|---|---|---|
| 検収 | 完成した目的物が契約の内容に合っているかを確かめる | 作業報告や成果物を確かめ、報酬を請求できる状態かを確かめる |
| 追加の依頼 | 完成の範囲が広がるので、範囲と金額の変更を合意する | 作業時間が増えるので、時間の上限や単価で合意する |
| 途中解約 | 完成前なら注文者はいつでも、損害を賠償して解除できる(641条)。受注者からいつでも解除できるとする規定はない | 双方がいつでも解除できる。相手に不利な時期などは損害賠償(651条) |
| 途中で終わったときの報酬 | 分けられる部分で注文者が利益を受けるなら、その割合で請求できる(634条) | 履行の割合(648条3項)、成果完成型は634条の準用(648条の2第2項) |
| 受注側の責任 | 契約の内容に適合しないときの責任。注文者の指図による不適合は原則として負わない(636条) | 善管注意義務(644条)に反したときの債務不履行責任 |
検収|請負は「完成したか」、準委任は「作業が済んだか」
請負の検収は、完成した目的物が契約の内容に合っているかを確かめる手続きで、報酬の支払いと結びつきます。準委任の検収は、作業報告や成果物を確かめて、報酬を請求できる状態かを確かめる手続きになります。準委任で「検収に合格しないと支払わない」と書くと、完成を約束した請負に近づくので、何を確かめれば検収とするかを契約書で決めておきます。
検収の流れ、検収基準や期間の決め方は、検収とはで詳しく説明しています。
追加の依頼|請負は範囲、準委任は時間で合意する
請負で受けた案件に追加の依頼が入ると、完成させる範囲そのものが広がります。範囲と金額と納期を変える合意をしないまま作業すると、追加分も「完成のための作業」に含まれてしまいます。準委任では、作業時間が増える分を、月の上限時間や超過分の単価で合意しておけば、追加の依頼をそのまま報酬に反映できます。
追加の依頼をどこで線引きするか、断るときの文例は、スコープクリープとはでまとめています。
途中解約|準委任は受注側からもやめられる
途中解約の条件は、請負と準委任で大きく違います。請負では、仕事が完成していない間、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できます(641条)。受注者の側からいつでも解除できるとする規定はありません。
準委任では、651条1項が「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる」と定めていて、受注側からもやめられます。ただし、相手に不利な時期に解除した場合や、委任者が受任者の利益(報酬を得ることだけを除く)も目的とする委任を解除した場合は、やむを得ない理由があるときを除き、相手の損害を賠償しなければなりません(651条2項)。いつでも解除できるのが原則なので、実務では「解除は1か月前までに書面で通知する」のような予告期間を契約書で決めておくのが一般的です。
発注する側が個人や一人社長のフリーランスに6か月以上続けて仕事を出している場合は、フリーランス法16条により、解除や更新しないときに、少なくとも30日前までに予告しなければなりません(公正取引委員会 フリーランス法特設サイト)。
責任|請負は指図による不適合を、準委任は手順の落ち度を見る
請負では、完成した目的物が契約の内容に合っていなければ、受注者が責任を負うのが原則です。ただし、民法636条は、注文者が出した材料や、注文者の指図によって生じた不適合については、注文者は責任を問えないと定めています。受注者がその材料や指図が不適当だと知りながら告げなかった場合は除かれるので、顧客の指示に問題があると気づいたら、その場で伝え、伝えた記録を残しておきます。
準委任では、成果が出なかったことではなく、専門家として当然すべきことをしたかが問われます。どの判断を、どんな根拠で、誰と決めたかを記録しておくと、善管注意義務を果たしたことを後から示しやすくなります。決めたことの残し方は、「言った言わない」をなくす方法で扱っています。
偽装請負にならないための線引き
偽装請負とは、請負や準委任の契約を結びながら、実際には顧客が受注側の担当者に直接指示して働かせている状態です。厚生労働省の疑義応答集は、こうした状態は労働者派遣法に違反するとし、準委任で結んだアジャイル型の開発でも、実態として指揮命令の関係があれば、契約の形式を問わず労働者派遣事業に当たると説明しています(厚生労働省 37号告示に関する疑義応答集(第3集))。
判断の基準は、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)です。この基準は、受注側の事業主が、作業のやり方の指示や評価、始業・終業の時刻や休日・残業の指示、服務の規律や配置の決定を自ら行い、仕事を自分の業務として顧客から独立して処理していることを求めています(厚生労働省 37号告示、疑義応答集の一覧)。
してよいこと・しないこと
疑義応答集(第3集)の考え方をもとに、顧客と一緒に作業する場面で、してよいことと避けることを並べると次のとおりです。
| 場面 | 偽装請負と判断されにくい | 偽装請負と判断されうる |
|---|---|---|
| 要望の伝え方 | 顧客の責任者が、作るものの内容や優先順位を説明する | 顧客の担当者が、受注側の担当者に作業の手順や順番を直接指示する |
| 打ち合わせ | 対等な立場で、技術的な議論や助言・提案をする | 打ち合わせの場で、受注側の担当者に作業を割り振る |
| 進捗が遅れたとき | 受注側の責任者が、仕事の割り付けや順序を調整する | 顧客の担当者が、受注側の担当者に直接、順序や急ぐ作業を指示する |
| 勤務時間 | 受注側が自社の担当者の時間を管理する | 顧客が受注側の担当者に残業や休日の作業を指示する |
疑義応答集は、こうした事態を防ぐために、顧客側と受注側の関係者それぞれの役割や権限、チーム内での仕事の進め方をあらかじめ明確にして合意しておくことなどが重要だとしています。受注側の責任者を置いても、顧客の担当者が受注側の担当者に直接指揮命令をすれば偽装請負と判断される、とも書かれています。
チャットや顧客の会社での作業で気をつけること
偽装請負の線引きが崩れやすいのは、顧客と同じチャットのチャンネルに入っているときや、顧客の会社に常駐して作業しているときです。顧客の担当者がチャットで受注側の担当者に「これを先にやって」と直接書き込み、受注側の担当者がそのまま作業の順番を変える、というやり取りが続くと、実態として顧客が作業を指示していることになります。
疑義応答集(第3集)は、顧客側の責任者が作るものの内容を詳しく説明したり、開発に必要な情報を伝えたりすること自体は、それだけで偽装請負になるわけではないとしています。問題になるのは、その説明や情報提供が、実態として作業のやり方や時間の指示になっている場合です。チャットでは、要望や情報は誰が書いてもよい一方で、「どの作業をいつやるか」の判断は受注側の責任者が返す、という役割を決めておくと線を保ちやすくなります。
実務では、顧客の要望は受注側の責任者(PM)が受け取り、作業の割り振りは受注側の中で決める、という流れを契約の前に顧客と合意しておきます。誰が何を決めるかを表にしておく方法は、RACIチャートとはで紹介しています。
契約書に書くことのチェックリストと、印紙・フリーランス法
請負か準委任かを決めたら、その型が契約書に読み取れるように書きます。表題が「業務委託契約書」でも、中身の書き方で、どの規定が当てはまるかが決まるためです。準委任で受けるときに確かめたい項目は次のとおりです。
- 契約の性質:「本契約は準委任契約とし、受託者は成果物の完成を保証しない」のように、型を明記する
- 作業の範囲:何をするか、何をしないか。対象外の作業も書く
- 報酬の型:履行割合型か成果完成型か。月額・時間単価・成果の単価のどれで払うか
- 報酬の額と支払時期:648条1項のとおり、特約がなければ報酬を請求できないので必ず書く
- 作業時間の上限と超過分の扱い:月の上限時間、超えたときの単価や事前の合意の方法
- 報告の方法:作業報告の頻度と形式。645条の報告義務を、具体的な運用に落とす
- 検収の基準:何を確かめれば作業が済んだとするか
- 途中解約:予告期間、途中で終わったときの報酬の計算方法
- 成果物の権利:著作権などを譲渡するか、利用を許すだけか
- 指示の流れ:顧客の要望を受け取る受注側の責任者、連絡の窓口
作業の範囲や対象外の作業、成果物の一覧は、契約書の本体ではなく別紙のSOW(作業範囲記述書)にまとめると、案件ごとに差し替えやすくなります。書き方とひな形は、SOWとはで紹介しています。
準委任の見積書で書いておくこと
準委任の見積書は、金額だけでなく、その金額で何時間分・どの期間の作業をするかが読み取れるように書きます。月額で受けるなら、月の作業時間の目安と上限、含まれる作業(例: 週1回の打ち合わせ、月1回の報告書)、含まれない作業(例: 新しいページの制作)を並べます。時間単価で受けるなら、単価と、月の上限時間を超えそうなときに事前に知らせる方法を書きます。
成果完成型で受けるなら、成果の単位(記事1本、報告書1冊など)と単価、成果を引き渡したとする条件を書きます。見積書の段階でこれらがそろっていれば、契約書やSOWにそのまま写せるので、合意した内容と書類の中身がずれにくくなります。
紙の契約書に印紙は要るか
紙の契約書に収入印紙が要るかは、表題ではなく中身で決まります。請負に関する契約書は印紙税の第2号文書で、記載された契約金額が1万円未満なら非課税、1万円以上100万円以下なら200円、100万円を超え200万円以下なら400円、金額の記載がなければ200円です(国税庁 No.7102 請負に関する契約書)。
委任契約書は、国税庁が印紙税の課税文書に該当しない文書の例として挙げています(国税庁 No.7130 誤って納付した印紙税の還付)。ただし、準委任の契約書でも、成果物の著作権を譲渡する条項が入っていると、無体財産権(著作権を含む)の譲渡に関する契約書として第1号文書に当たることがあります(国税庁 No.7140 印紙税額の一覧表(その1))。個別の判断は税務署に確認してください。
注文請書や基本契約書の印紙、PDFで交わした場合の扱いは、注文請書とはの判定表で詳しく扱っています。
フリーランスに頼む・フリーランスとして受ける場合
2024年11月1日に施行されたフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、従業員を使わない個人や、代表者1人だけで従業員のいない法人に仕事を頼む取引にかかります(厚生労働省 フリーランス・事業者間取引適正化等法)。法律の「業務委託」には、物の製造や情報成果物(プログラム・デザイン・文章など)の作成の委託に加えて、役務の提供の委託も含まれるので(2条3項)、準委任で頼む運用支援やコンサルティングも対象です。
| 義務 | 誰が負うか | 内容 |
|---|---|---|
| 取引条件の明示(3条) | フリーランスに仕事を頼むすべての事業者(フリーランスどうしも含む) | 頼んだら直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日などを書面か電子メールなどで示す |
| 支払期日(4条) | 従業員を使う事業者など | 給付を受け取った日(準委任などの役務なら、役務の提供を受けた日)から60日以内で、できる限り短い期日を決める |
| 解除の予告(16条) | 従業員を使う事業者など | 6か月以上続く業務委託を解除する、更新しないときは、少なくとも30日前までに予告する |
準委任で月額の運用をフリーランスに頼んでいる会社が、翌月から打ち切りたいと考えた場合も、6か月以上続いていれば30日前の予告が要ります。民法では準委任はいつでも解除できますが、この予告の義務は別にかかる点に注意してください(e-Gov法令検索 フリーランス・事業者間取引適正化等法)。
準委任で受けるときによくある失敗と防ぎ方
準委任で受けた案件で起きやすい失敗と、その防ぎ方をまとめます。どれも、契約の時点で型と範囲を書いておけば防げるものです。
| よくある失敗 | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 表題だけ「業務委託」で、型を書いていない | 顧客は完成まで面倒を見てもらえると思い、受注側は時間で受けたつもりになる | 契約の性質(準委任で完成を保証しない)を明記する |
| 「検収合格後に支払う」とだけ書く | 実質的に完成を約束したと読まれ、請負と同じ扱いを求められる | 何を確かめれば検収とするかを、作業報告や成果の単位で書く |
| 月の上限時間を決めていない | 追加の依頼が月額の中で膨らみ続ける | 上限時間と、超えたときの単価・事前の合意の方法を書く |
| 顧客の担当者が受注側の担当者に直接指示する | 偽装請負と判断されるおそれがある | 要望の窓口を受注側の責任者に一本化し、契約前に合意する |
| 解除の予告期間を決めていない | 翌日から打ち切られ、確保していた人員が宙に浮く | 予告期間と、途中で終わったときの報酬の計算方法を書く |
| 作業の判断の記録が残っていない | 成果が出なかったときに、適切に作業したことを示せない | 判断とその根拠、合意した相手と日付を記録する |
契約の型と、決めたことを顧客と同じ場所に残す
準委任で受けた案件では、「何を約束したか」と「どう作業を進めたか」を後から示せることが、そのまま受注側を守ります。契約書と作業範囲の別紙、作業報告、打ち合わせで決まったことが別々の場所にあると、途中解約や追加の依頼の話になったときに、どれが最新の約束かを双方が確かめられません。
契約書・SOW・作業報告・議事録を、案件ごとに顧客と同じ場所に置いておくと、顧客がどの資料を確認したかも分かり、作業を報告した記録としても残ります。
契約と作業の記録を、顧客と同じRoomに残す
Terasuは、ページ・資料・議事録・タスクを案件ごとのRoomに集める共有ワークスペースです。契約書やSOW、作業報告を同じRoomに置けば、先方が資料を閲覧したかどうかが分かり、議事録とあわせて何をいつ決めたかも残せます。クレジットカード不要で、まず1つの案件Roomから試せます。
無料で案件Roomを作るよくある質問(FAQ)
準委任契約とは何ですか?
法律行為ではない事務の処理を相手に任せる契約です。民法656条が委任の規定を準用すると定めています。仕事の完成を約束する請負と違い、事務を適切に処理することを約束し、完成の義務は負いません。Webサイトの運用、コンサルティング、開発の支援などが典型です。
準委任契約と請負契約の違いは何ですか?
完成の義務があるかどうかです。請負は仕事を完成させ、その結果に対して報酬を受け取ります(民法632条)。準委任は事務を適切に処理することを約束し、善管注意義務(644条)を負いますが、完成は約束しません。途中解約も、請負は完成前に注文者がいつでも損害を賠償して解除でき、準委任は双方がいつでも解除できます。
成果完成型と履行割合型の違いは何ですか?
報酬が何に結びつくかの違いです。履行割合型は作業をした量や期間に応じて払い、成果完成型は報告書や記事など作業で得られる成果に対して払います(民法648条・648条の2)。成果完成型でも完成の義務はなく、成果が出なければ報酬が発生しない、という報酬の条件が付くだけです。
準委任契約なら成果物がなくても報酬を請求できますか?
履行割合型なら、事務を適切に処理していれば、成果が想定どおりでなくても報酬を請求できるのが原則です。ただし、民法648条1項は特約がなければ報酬を請求できないと定めているので、報酬の額と支払時期を契約書に書いておく必要があります。成果完成型では、成果の引渡しと同時に報酬を請求します。
SESは準委任契約ですか?
SESは技術者の作業時間に対して報酬を払う形が多く、準委任で結ぶのが一般的です。ただし、準委任で結んでも、顧客が技術者に作業のやり方や時間を直接指示している実態があると、厚生労働省の基準では労働者派遣と同じ扱いになり、偽装請負として労働者派遣法違反と判断されます。
準委任契約は途中で解約できますか?
できます。民法651条は、委任は各当事者がいつでも解除できると定め、準委任にも準用されます。ただし、相手に不利な時期に解除した場合などは、やむを得ない理由がない限り損害を賠償します。フリーランスに6か月以上続けて頼んでいる場合は、フリーランス法で30日前までの予告も必要です。
準委任契約書に収入印紙は必要ですか?
紙の委任契約書は、国税庁が印紙税の課税文書に該当しない文書の例に挙げています。ただし、成果物の著作権を譲渡する条項がある場合は第1号文書に、仕事の完成を約束する部分がある場合は請負の第2号文書に当たることがあります。判断に迷う場合は税務署に確認してください。
契約の途中で請負から準委任に変えられますか?
双方が合意すれば、変えられます。変えるときは、変更する時点までの作業の扱いと報酬、変更後の報酬の型と範囲を書面(電子メールを含む)で合意します。要件が決まらず請負のままでは進めにくいと分かった時点で、残りの工程だけを準委任に切り替える方法もあります。
まとめ
- 準委任は、事務を適切に処理することを約束する契約:民法656条で委任の規定を準用し、受任者は善管注意義務(644条)と報告の義務(645条)を負います。完成の義務はありません
- 請負との違いは完成の義務、派遣との違いは誰が指示を出すか:請負は完成と結果に報酬が結びつき、準委任は作業に結びつきます。どちらも、顧客が受注側の担当者に直接指示はできません
- 報酬は履行割合型と成果完成型から選ぶ:作業の量や期間で払うか、成果の引渡しに結びつけるか。どちらも特約がなければ報酬を請求できないので、額と時期を書きます
- 受託・制作では「何を渡せば完了かを言えるか」で決める:言えるなら請負、言えないなら準委任。迷う案件は工程を分けて契約します
- 型で、検収・追加の依頼・途中解約・責任が変わる:準委任は双方がいつでも解除でき、フリーランスへの6か月以上の委託は30日前の予告が必要です
次に見積もる案件では、契約書を作る前に、「何を渡せば完了か」を一文で書けるかを確かめてください。書けなければ、その工程は準委任で受ける候補です。
本記事の情報について: 法令の条文(民法・フリーランス・事業者間取引適正化等法)はe-Gov法令検索、民法改正の施行日は法務省、偽装請負の判断基準は厚生労働省の37号告示と疑義応答集(第3集)、フリーランス法の内容は厚生労働省と公正取引委員会のウェブサイト、印紙税の扱いは国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在の法令等)、アジャイル開発のモデル契約はIPAのウェブサイトで、2026年11月5日に確認しています。仕事の種類ごとの契約の型は目安で、個別の契約の内容は法務担当者や弁護士に、印紙税の扱いは税務署や税理士に確認してください。


